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京都再訪 [Art]

3日間ほど夏休みを取ったので、まず16日は京都へ。宿にチェックインした後で京都国立博物館へ向かい、先月見た「美のかけはし」展を再訪。展示替えになった作品を中心に楽しむ。日本史の教科書でもお馴染みの「源頼朝像」などもやはり迫力があるし、黒一色に見える衣服に柄が描かれているのは実物を見ないと絶対にわからない。伝俵屋宗達筆とされる「鴨図押絵貼屏風」も近年修復され六曲一双の屏風にとして展示されていたが、とても立派なもの。

夕刻になり、加茂街道にある友人の店へ。ここの二階座敷からは大文字(東山如意ヶ嶽)が丁度よく見えるという贅沢が味わえる。関西在住時に初めて経験して以降東京に来てからも、16日の晩にはほぼ毎年お邪魔している。送り火が消えてからも、美味しい料理やオーストラリアワインをいただきながら、相変わらず最近東京で見た若冲の話やら何やらで遅くまで話込む。ちなみに写真だが、三脚も無い400万画素のコンパクトデジカメでは、これが精一杯。



明けて17日は台風が接近していることもあるのか、前日より更に湿度が高く京都の夏特有の逃げ場のない暑さ。とりあえずJR京都駅に荷物を置いてから、四条あたりに戻って昼食の店を探したが、盆休みで休業の店も多く、結局錦市場にある青果店「池政」が店の奥のテーブルで出している月替わり定食(1,575円)に。毎日のランチとしてはちょっと高いが旅行中の昼食なら出してしまう値段。ここももはや観光名所の一つであるようだが、茄子、南瓜などの炊き合わせや茗荷、万願寺唐辛子などの天ぷらは、やはり野菜の味が甘くてまずまずの美味。


続いて、昨日の友人のお薦めに従い、油小路中立売にある「樂美術館」へ。


樂焼については殆ど何も知らない状態で向かったのだが、夏休みの時期ということもあってかシリーズ樂ってなんだろう 親子で見る展覧会 樂焼の七不思議」という、極めて初心者向きの展示をしてくれていたのは有り難かった。とは言え、初代長次郎から当代(十五代)まで歴代の作品が並べられ、月並みだが暖かみのあるフォルムにはほっとするものを感じ、斬新な意匠には心地良い緊張感を味わう。それにしても、代々が赤茶碗、黒茶碗ということを除いては先代の作風を引き継がず、むしろオリジナリティを打ち出しながら400年以上も家として伝承されてきているというのは、非常に興味深いことだと思った。9月には東京・日本橋の三井記念美術館でも特別展があるとのことなので、足を運んでみようかと思う。

その後一旦四条界隈に戻り、まずお茶の「三丘園」へ。以前に関西の情報誌で知り買ってみて美味しかった「抹茶ピーナッツ」を土産用に購入。


次いで、箸で有名な「市原平兵衛商店」を覗いてみる。もう一軒こちらも有名店だが、百万遍の近くにある「緑寿庵清水」まで足を伸ばして金平糖を購入。こうして土産物が揃ったところで京都駅に戻り、そのまま新幹線で東京へ。


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「若冲と江戸絵画」展 [Art]

プライスコレクション 「若冲と江戸絵画」展
東京国立博物館 平成館

国立劇場の鑑賞教室が1時40分頃に終わったので、頑張って上野まで足を伸ばすことにした。開催前からぜひ行きたいと思っていたのだが、主催者でもある日経新聞で連日のようにPR記事が掲載されていたので、かなり混雑しているのではないかと心配しながら平成館へ向かった。

2階展示室へ上がると、やはり結構混雑はしていたものの、昨年の「北斎展」ほどではなく落ち着いて見て回れそうでひとまずほっとする。

内容、構成および展示作品の画像もオフィシャルサイトに詳しいが、全109点が展示替え無し(巻き変え等は一部あり)というのも嬉しい。

まず第一章「正統派絵画」は、狩野派の屏風絵など11点で、比較的落ち着いた感じのものが多い。次いで第二章「京の画家」では、長沢芦雪や山口素絢などの味わいある絵が印象に残る。

展覧会のタイトルでもある若冲作品は「第三章 エキセントリック」に17点という多数の展示。やはり象などの動物達の親しみ易さとタイル地のような手法の珍しさからか「鳥獣花木図屏風」に最も多くの人が群がっていた。どうして江戸時代にこんな南国の楽園のような絵が描けるのだろうか。また、若冲代表作の一つとされる「紫陽花双鶏図」は間近でみるとやはりそのマニアックなまでの描き方に圧倒される。「雪中鴛鴦」では細い枝に乗る雪のボリューム感が独特。リアルなようで実は非常に作り込まれた表現だと思う。一方で「鶴図屏風」での思い切りの良いデフォルメなど簡潔で洒脱な表現との対比もとても楽しい。

第四章「江戸の画家」は、歌川国貞などの肉筆浮世絵などを中心に21点。河鍋暁斎「妓楼酒宴図」では、吉原の酒宴の賑わいを屏風の達磨が睨んでいるような構図が面白い。

第五章「江戸淋派」になると、酒井抱一、鈴木其一などで16点。若冲のインパクトとはまた異なり、かなり繊細で洗練度が高い印象を受ける。その中では「三十六歌仙図屏風」「狐の嫁入り図」などのユーモラスな図案が却って目を引く。

最後に第4室では、「日本絵画を鑑賞する際、光の果たす役割は非常に重要である」というプライス氏の持論を生かす形で、光の変化を楽しむ珍しい展示がなされている。金銀の屏風絵や掛け軸の幽霊図など計14点が、左右から当てられる光が次第に変化していく中でその姿を変えていく。何よりも、ガラスを隔てないで作品に接することができるのは本当に有り難い。考えてみれば、日本家屋に置かれた屏風絵などはフラットな蛍光灯の下で見られることを想定していなかったわけで、こうした試みは今後もぜひ考えてほしい。

なお、1階の特別展示室では「母と子のギャラリー」と題してプライスコレクションから8点の作品が展示されているのだが、帰りを急いでしまったため気付かず見逃してしまったのはちょっと残念。

それにしても、これだけの日本絵画がアメリカ人の個人蒐集品というのは、羨ましいというか、素晴らしいというか。


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「美のかけはし」展 [Art]

京都国立博物館 特別展覧会/開館110年記念
 美のかけはし ー名品が語る京博の歴史ー

この週末3連休は関西遠征。まず初日は京都へ。雨模様の中を博物館へ向かう。


今回の展覧会は、京博の収蔵品と寄託品約120点が展示されるが、そのうち国宝が26、重要文化財が37点というなかなか豪勢なもの。展示は大きく二つに別れ、まず前半では博物館の立つ東山の地に縁のある後白河法皇・平清盛・豊臣秀吉(博物館の隣は豊国神社)に関わる品々を紹介。後半は博物館の建築資料(図面等)から始まる博物館の歴史と、「集める」「見(魅)せる」「伝える」「育む」といった博物館の機能の例として、数々の寄贈コレクション、さらに最近になって収集されたり修復された品々を並べている。

やはり最も印象が強かったのは、お目当てだった俵屋宗達「風神雷神図屏風」。誰でも知っている自由闊達な図案の名品だが、実物の力というか、写真や図版と異なり屏風として立てて展示されていることでさらに躍動感や空間の広がりが感じられた。それにしても、見ているちょうどその時に外から雷の音が聞こえてきたのは、あまりに出来過ぎだった。

他には、藤原為家筆「土佐日記」の流麗な筆致や、豊臣秀吉所用とされる「桐矢襖文胴服」の斬新な辻が花染のデザイン、更に謎の画家とされる藝愛の「四季花鳥図屏風」や伝牧谿筆の「遠浦帰帆図」などもなかなか印象的だった。

音声ガイドを律儀に聴いていたら結局6時の閉館ギリギリになり、その後で加茂街道にある友人の店へ。
随分久しぶりに顔を合わせた知り合いの先客が早い時間からワインを飲んでいたとのことで、入れ違いながら少しラップして色々と話ができたのは嬉しかった。
料理も、前半は和食系、後半にアフリカ料理という流れで、チュニジアの春巻き・ブリック、南アフリカの国民食・ボボティ、ジンバブエの家庭料理・ノピなど、珍しいエスニックなものでも洗練度の高い料理が楽しい。飲み物も、ビールの後でイタリア・トスカーナの赤ワイン"S.LORENZO"へと進み、取り留めなく四方山話をしながら、いつも通り結構長居をしてゆったりと過ごさせてもらうことができた。




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「最澄と天台の国宝」展 [Art]

東京国立博物館

天台宗開宗1200年記念 特別展 「最澄と天台の国宝」


かなり大がかりな展覧会なようなので、むしろGW中の比較的空いている日を狙って行こうかと思っていたら、昨年10月から11月に同展が開催されていた京博(京都国立博物館)で仕事をしている友人から、「『六道絵』の展示期間中がお勧め。16日(日)までですが」との情報があったので、腰を上げて出かけることにした。

入場してから平成館に向かうまでの看板にも書かれていたが、出品数の八割以上が重要文化財または国宝というボリューム感のある展覧会だった。

構成としては、下記の6区分に大別されていたが、順路としては第三章と第四章が逆転していることも含め、綿密な構成による流れと言うよりは、大らかなまとまりとして括られているといった印象を受けた。

第一章 天台の祖師たち
第二章 法華経への祈り
第三章 浄土への憧憬
第四章 天台の密教
第五章 比叡の神と仏
第六章 京都の天台

第一章は、冒頭から最澄自身の書ばかりでなく、嵯峨天皇、小野道風自筆の書なども当たり前のように出品されていた。書への造詣など全く無いのだが、三筆の一である嵯峨帝には高貴さを、また道風にはこれ以上無いようなバランスを感じさせられた。さらに、開祖伝教大師を始めとして、慈覚大師、智証大師などの仏画や木像などが続く。

第二章以降も、国宝の仏画や軸、さらに仏像も古刹の本尊や秘仏がこともなげに並べられていた。その中でも、東博所収の普賢菩薩像一幅(国宝)や、ポスターなどに使われている横川中堂本尊の聖観音菩薩立像(重文)などが強く印象に残った。(普賢菩薩は歌舞伎座で昨日遭遇したばかりで、不思議な縁ではある)

更に、友人お勧めだった滋賀・聖衆来迎寺蔵「六道絵」(国宝)は、「往生要集」に説かれる六道の諸相を描いた十二図(等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、阿鼻地獄、餓鬼道、畜生道、阿修羅道、人道不浄相、人道苦相一、人道苦相二、人道無情相、天道)と、経典説話二図、さらに閻魔王庁図の計十五幅。いずれも13世紀鎌倉時代のものにしては彩色も比較的鮮やかに残っており、かつ文字通り「地獄の責め苦」が具体的に活写されている。生々しさと高潔さを併せ持ちながら現代の我々が見てやはり恐ろしさを覚えるような諸図であり、700年以上前の人たちにはどれほどのインパクトがあったものか。これだけのものを一度に見られる機会の希少さを考えると、やはり展示替え前に見に来て良かったと思う。

入場したのが午後4時だったが、土日の閉館時間が通常より一時間遅い午後6時ということで何とか一通り回りきることはできた。ただ、音声ガイドもじっくり聞きながら見ていくとなると、少なくともあと30分は必要だと思うので、これから行かれる方は時間に余裕を持って来館されることをお勧めしたい。
終盤の慌ただしさと点数の多さから、やはり図録を買って帰ることにしたが、その重さにビックリ。売店の人に聞いたら2kg弱もあるとのことで、鞄の重さを感じながら上野のお山をあとにした。


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「とろう会」写真展 [Art]

歌舞伎長唄三味線方の杵屋栄十郎さんから、今年もご案内をいただいた。会期が2月9日(木)から21日(火)までだが、日曜祝日が休みなので、土日で行けるのは今日だけということで、銀座に出かけた。アマチュアの写真愛好家の会で今回で19回目になるとのことだが、他にも鳥羽屋里長、清元志寿子太夫といった名前もあり、全部で20点ほどの写真が展示されていた。

会場には出展者の一人である遠藤さんがおられた。年配の方だが、今でも毎年一人でアフリカまで撮影旅行に行かれるとのことで、ケニヤで撮影した水浴びする子象や結構近い距離からのピューマの写真などが目を引いた。
また里長師はハワイで撮ったという光と影の三題、志寿子太夫師は石垣島の海の渋い写真、そして栄十郎さんは隅田川花火の写真を出展されていた。
それにしても、それぞれに本業以外にも才能を発揮されているのは羨ましい限り。


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「北斎展」 [Art]

東京国立博物館

北斎展

文化の日に展覧会に出かけるというのは、あまりにベタだったかも。

広く知られた葛飾北斎の大がかりな展覧会ということである程度予想はしていたが、既にチケット売場に「混雑しているのでご了承下さい」との掲示。入場すると、老若男女がごった返していて、進むのが大変。子供連れや若いカップルも多い。

確かに若い頃から最晩年まで、それも版画よりむしろ肉筆画の方が多く、展示点数は約300点、入れ替えを含めると500点近い作品数は半端ではない。展覧会の宣伝文句に「日本国内はもとより、大英博物館、ベルギー王立美術館、メトロポリタン美術館、ボストン美術館ほか多数の欧米の美術館から出品予定。決定版「北斎展」をお楽しみに。」とあるとおり、圧倒的な数で迫ってくる。

90才という当時にしては驚異的な長寿を全うした北斎は、年代毎に号を変えてきており、展示もそれに従って区分されている。

第一期:春朗期---習作の時代--- 20歳頃〜/安永8年(1779)頃〜
第二期:宗理期---宗理様式の展開--- 36歳頃〜/寛政6年(1794)頃〜
第三期:葛飾北斎期---読本挿絵への傾注--- 46歳頃〜/文化2年(1805)頃〜
第四期:戴斗期---多彩な絵手本の時代--- 51歳頃〜/文化7年(1810)頃〜
第五期:為一期---錦絵の時代--- 61歳頃〜/文政3年(1820)頃〜
第六期:画狂老人卍期---最晩年 75歳頃〜90歳/天保5年(1834)頃〜嘉永2年(1849)

風景版画のイメージの強い北斎だが、第一期から第三期までは芝居絵、役者絵も多い。特に「宗理様式」と言われるすっきりとした美人画を確立した第二期は新鮮だが、第三期になるとその美人画も艶っぽいものが増えてくる。中国絵画風の作品群も、一般的に抱く北斎のイメージからは遠いが、充実度は高い。

第四期からは、これも展覧会のコピーにあった表現のとおり「画狂人」ぶりが際立ってくる。「北斎漫画」として知られる人間の様々なポーズ、動植物から妖怪まで幅広い絵手本はとても楽しく、現代日本におけるコミックやアニメの祖先だと多くの人が感じるのではないか。また、「東海道名所図絵」では、30cm×40cm程度の中に日本橋から京都まで双六のように全て描ききっており、更に拡大鏡でよく見ると田圃や人影まで細かく書き込んであるのには唖然とする。

最も有名な「富嶽三十六景」は第五期の作品だが、初刷りと重版でかなり色遣いが違うものを並べて展示してあるのは面白い。最も有名な「神奈川沖浪裏」の前は本当に人の流れが動かず、古い例えだが「モナ・リザ展」のよう。第六期は80歳を過ぎた最晩年だが、画力は衰えず密度の濃い肉筆画の数々が並ぶ。

とにかく描いて描いて描きまくった一生だったということがよくわかるような、迫力のある展覧会であることは確か。展示替えのことを考えるともう一度足を運ぼうかとも思うが、できれば平日、それが無理なら土曜日の開館早々に飛び込んだ方が良いかもしれない。

ちなみに、図録は3,000円という良いお値段だが、図版は綺麗だし何より400ページというとんでもないボリュームなので、考えようによっては割安かも。


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イスラム美術展「宮殿とモスクの至宝」 [Art]

世田谷美術館

ロンドンV&A(ヴィクトリア&アルバート)美術館所蔵・イスラム美術展

車検に出していた愛車を引き取りに行く前に、久々の世田谷美術館へ。時間が遅くなったので急いで回ることに。音声ガイドが首掛け&ヘッドフォン型でなく、初めての携帯電話型だったので少し戸惑う。

ヴィクトリア&アルバート美術館の改装に伴う国際巡回展の一環で、日本では今回の世田谷美術館での展覧会だけとのこと。日本、中国、朝鮮半島を中心とした東洋(東アジア)美術、またギリシャ・ローマ、中世・ルネッサンス、近現代までの西洋(西欧)美術に触れる機会は少なくないが、これだけまとまったボリュームのイスラム美術に触れる機会は初めて。

初期カリフ帝国のピークであるアッバース朝、エジプト・マムルーク朝からオスマン・トルコを中心に、イベリア半島からモンゴルまでの地域にわたる美術品の数々。
モスクに備えられる大型の説教壇、礼拝用マット、大小様々なコーランの写本、5m×3m以上のペルシャ絨毯、十字軍が持ち帰りイングランド北部で伝承されてきた13世紀のガラス杯、ランプ、ラスター陶器、金銀真鍮に精細な象嵌を施した水挿や水盤、高さ7mものタイル製暖炉、為政者の肖像画まで、多様かつ多彩。

多くの展示品に緻密な幾何学模様と意匠化されたアラビア文字が溢れているが、これは偶像崇拝を禁じたイスラム信仰のためであるとか、どこからでも決まった時間にメッカのカーバ神殿に向けて祈りを捧げるために時刻、方位などを把握する必要から天文学や技術が発展した、との説明も興味深い。少なくとも中世15世紀まではイスラム圏が世界の科学技術の中心だったとのことで、そのことをうかがわせる展示品も。色彩という面ではターコイズ・ブルーばかりでなく、藍色、陶器や織物の赤、緑など豊富。

19世紀ロンドンに多くのイスラム美術品が蒐集された背景には、大英帝国と植民地化されていたイスラム圏との力の対比もあったかもしれない。そうしたことを含め、現代の中東地域にまつわる様々な問題を考えるにあたっても、この豊かな文化遺産に触れておく意義は小さくないと思う。


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特別展「国宝 燕子花図 ー光琳 元禄の偉才ー」 [Art]

根津美術館

昨年夏の「琳派 RIMPA」展(東京国立近代美術館)でも楽しんだ光琳の代表作である「燕子花図」が4年半の修復を経て久々に展示されるということで、10月半ばと思えぬほど蒸し暑さを感じる中、いそいそと出かけた。ちなみに、私の出身小学校はこの美術館のすぐ近く。

「アジアのキュビズム」展の記事も載っていた「芸術新潮」の最新号の巻頭大特集が「光琳の七不思議」で、これを読んで多少なりと<にわか勉強>をしていったが、やはり月並みながら屏風絵という形式の迫力は現物を見て始めて伝わってくる。
特に、様々な視角毎に各曲の重なり合いが移り変わる様などは、当然のことだが屏風としてディスプレイされないとわからない。全体としては、構図の流れと広がりや不思議さが何と言っても印象的だが、しばらく見ていると花の色遣いの濃淡や葉を描く筆の勢いがじわじわと立ち上がってくるようでもある。願わくば展示室のガラスケースの中でなく、大きな座敷に置いて見るともなく眺める、といった贅沢をしてみたい。
京都の呉服屋のぼんぼんで、能と女が大好きで男色趣味もあり、放蕩して食い詰めた挙げ句に絵を生業としたという光琳だが、他の絵も含めて最も感じるのは「闊達さ」である。求道とか集中とか真面目さといったものからは遠く、むしろ溢れる才能を持て余していたということではなかったかと思う。

展覧会終了時刻の4時半まで粘り、その後は駆け足で庭を巡って美術館を後に。

それにしても、小学生のときにこの池でザリガニを獲った記憶が確かにあるのだが、今となっては自分でもなかなか信じられない。


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「アジアのキュビズム」展 [Art]

10月1日(土)(東京国立近代美術館

 招待券を貰ったものの、キュビズムと言われてもあまり思い入れは強くなかったのでどうしようかと思っていたけど、アジアの近代美術にふれる機会も意外と少ないと思い、竹橋へ。

キュビズムというのは<「単一焦点による遠近法の放棄」「視点の複数化による把握と再構成」といった美術制作の概念・動向>というものらしいですが、確かに「あるがまま」の曖昧さではなく知的な再構築というのが基本のようです。

 それでも今回展示されていた作品は、「やはりアジア的」というと安易な一般化ですが、必ずしも知に囚われるというより、むしろ触感・質感や民俗の匂いまでも感じさせるものが多く、テーマに沿った一貫性よりも多様性を楽しむことができたので、結果としては足を運んで正解でした。


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美術展など(6月〜9月) [Art]

こちらは回数が少ないので、感想を一言ずつ。

7月 2日( 土)
「ドレスデン国立美術館展」(国立西洋美術館

 とりあえずはフェルメール目当て。もちろんそれも素晴らしかったけど、18世紀ザクセンの文化の厚み、特に科学技術、トルコ趣味、東洋美術(陶器)といった幅広い文化への繋がりが感じられて、予想以上に刺激的な展覧会でした。

7月18日(月)
「京の優雅 〜小袖と屏風〜」(京都府文化博物館

 祇園祭に出かけた翌日に三条高倉に寄ってみました。京友禅の老舗「千總」に伝わる友禅染の小袖や屏風、原画等々を贅沢に陳列。想像以上に混雑してました。友禅なるものをあれだけしげしげ眺めるのは初めての経験でしたが、いやはや創業450年の蓄積というのはたいしたもので、一個人商店という域を遙かに超えた伝統の凄みを感じさせて頂きました。

8月15日(月)
「遣唐使と唐の美術」(東京国立博物館

 招待券を貰ったので出かけてみました。唐の地で若くして亡くなった遣唐使留学生・井真成の墓誌が発見されたことをきっかけとした展覧会でしたが、唐三彩や金工芸が豊富に陳列されており、まずまず楽しめました。
 同時開催の「模写・模造と日本美術」は閉館までの時間が足りず駆け足でしたが、単に文化財保護のためだけでなく、新たな芸術創造の原点としての模写・模造という技法が、明治維新以降の東京美術学校(現・東京芸大)にも受け継がれていたことに改めて感じ入った次第。

10月以降は、幾つかお目当てがあるので、その都度また。


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