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四月大歌舞伎(夜の部) [観劇(伝統芸能)]

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歌舞伎座百二十年 四月大歌舞伎(夜の部)

歌舞伎座 2008年4月12日(日)16時30分開演 1階17列24番

  真山青果 作 真山美保 演出
1.将軍江戸を去る 一幕三場
昨年12月南座顔見世で観て間がないが、今回は全く配役が違う。

まず徳川慶喜は、南座での梅玉が将軍家故の孤独を抑制的にで表現しながら台詞は朗々と歌い上げていたのに対して、今回の三津五郎は初役とは思えぬ落ち着きがあり、さらに薩長に対する屈辱感に揺れる気持ちをより人間味をもって表現していたように思う。

続いて山岡鉄太郎だが、南座では我當が熱気と一途さを感じさせ安定感を見せていたが、今回の橋之助は酔態の勢いや若さをよく現しており、感情が昂ぶったところで時として台詞が少々上っ調子になることを除けば、こちらも初役としては十分。こうした少し現代的な芝居に意外と向いているのかも。

高橋伊勢守は最近はとみに幅広い役どころを求められている彌十郎で、きちんとこなしてはいると思うが、ややもすると洒脱さが世話に流れてしまうように見えるところもあり、もう少し高位の幕閣らしい威厳といったものも見せた方が舞台が締まるようにも思えた。


2.歌舞伎十八番の内 勧進帳 長唄囃子連中
富樫は比較的多く演じている仁左衛門だが、弁慶は平成13年1月松竹座以来で、東京では何と21年ぶりとのこと。全体に声を低めつつ明瞭な口跡で、ある意味予想どおり知謀に長けた弁慶像ではあるが、勿論力強さや大きさにも不足感はない。また、進め方が全体にゆっくりと落ち着いており、特に山伏問答などではそれが顕著で、最初は緩やかに入って徐々に緊迫感を高めていくやり方で、これはこれで好ましい。それでも上演時間は1時間15分と他の上演とあまり変わらないのは、全体としてきちんと緩急がついているということだろう。

勘三郎の富樫は、その山伏問答など特に前半では仁左衛門との掛け合いも良い感じで付き合っているが、それ以外のところでは時として台詞も動きも大仰になり「いかにも中村屋」な感じになってしまうのが惜しい。

玉三郎の義経も20年振りで私自身も初見だが、本人が筋書のインタビューで「能では子方の役」といっていたように、少年のような雰囲気と高貴さを感じさせるが、それが他の二人の芝居と合っているかというのはまた別の問題ではある。ただ「判官御手を取り賜い・・・」などではきちんと想いのこもったものを感じた。


  井上ひさし 作「手鎖心中」より 小幡欣治 脚本・演出 本間忠良 演出
3.浮かれ心中 二幕
   中村勘三郎ちゅう乗り相勤め申し候
平成13年大阪松竹座での上演以来2度目の観劇。平成9年と14年は観ていないので、歌舞伎座では初見。

勘三郎は「今年は子年だし鼠に乗って宙乗りする芝居もいいなあ」ということで取り上げたらしいが、こういう芝居は中村屋らしくても全く問題ない。戯作者として有名になりたくてあえて馬鹿なことを真剣にやる、といったテーマを考えすぎても却って浮いてしまいそうなので、あまり何も考えずに笑って楽しめる芝居であって構わないのではないかと思う。最後のちゅう乗りでは、前回と同様に猿之助のことにも触れながら、花吹雪や手拭いを撒いて大盛り上がり。

太助(後の式亭三馬)は、前回の橋之助に代わり初演と同じ三津五郎で、勘三郎との掛け合いにレベル感の違いが無いのが良い。籠釣瓶のパロディなども含め、細かいところも達者で楽しませてくれる。

前回まで福助が二役を勤めたうち、花魁帚木は今回は七之助。籠釣瓶ばりの花魁道中も、身請けされてから計略を巡らすところも、思ったより危なげない。一方、栄次郎と一年限りの約束で女房になるおすずは今回は時蔵で、おっとりとしたいかにも人の良い雰囲気ながら弾けた滑稽さも垣間見せてくれ、舞台全体に膨らみの出るような楽しさがあった。他には、序幕で出た遣り手お辰の小山三が良い味。



タグ:歌舞伎
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三月大歌舞伎(夜の部) [観劇(伝統芸能)]

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歌舞伎座百二十年 三月大歌舞伎(夜の部)

歌舞伎座 2008年3月16日(日)16時30分開演 1階16列21番


  四世 鶴屋南北 作
1.御存 鈴ヶ森 一幕
芝翫の白井権八、富十郎の幡随院長兵衛という大顔合わせ。

本格的に歌舞伎を見始めて間もない平成4年、七代目梅幸で権八を見たときには、なぜ大ベテランが敢えて若衆をやるのかと思った憶えがあるが、その後の観劇回数を重ねたことで少しはその味わいを感じることができるようになったかと思う。今回の芝翫も立派な大御所で平成11年いらい9年振りとのことだが、古風な顔や姿で前髪の若侍らしいすっきりとした所作を見せるところは流石。

富十郎は、くっきりとした口跡が気持ち良く、大立て者の太い貫禄というよりは、よくわきまえた大人の落ち着きを感じさせ、こちらも十分。

道化役の飛脚を段四郎が丁寧に勤め、さらに雲助で左團次、彦三郎が付き合っているのも贅沢感があって良い。


  坂田藤十郎喜寿記念
2.京鹿子娘道成寺 道行より押戻しまで 竹本連中 長唄囃子連中
昨年12月南座顔見世に引き続いて喜寿記念の「娘道成寺」だが、前回と異なり今回は道行から押戻しまでたっぷりとある。それでも藤十郎は息の上がったところなど全く感じさせない。それどころか、全体を通して娘らしい色気を湛えた柔らかな雰囲気を絶やさず踊り進み、鐘入りの後に蛇体となっての押し戻しまで、たっぷり堪能させて貰った。

その押戻しでは團十郎が大館佐馬五郎を勤めるが、やはりこうした役どころでは荒事の市川宗家ならではの大きさと稚気を感じさせてくれて嬉しい。



  三世 河竹新七 作
3.江戸育お祭佐七 二幕五場
   浄瑠璃「道行旅路の花聟」 清元連中
江戸らしい世話狂言ながら当代菊五郎初役というのは意外。最近では先代権十郎、勘弥、先代および当代團十郎などが取り上げてきた芝居らしい。幕開きは神田祭の場面で、劇中でお軽勘平の「道行」を芸者衆が演じるのも風情がある。

菊五郎は、気っ風の良さもあるが弱さもある江戸っ子の佐七を活き活きと演じる。対する時蔵の小糸も、さっぱりとした雰囲気の中に情の深さを感じさせ、まずまず。終盤の二人が縁切りから殺し場へと進んでいく流れは「御所五郎蔵」を思い起こさせる。

小糸の養母・おてつに頼まれて小糸を連れ戻す仲立ちに来る勘右衛門を仁左衛門が付き合うが、佐七との格の違いをしっかりと見せる。また、團蔵が恋仇の侍・倉田伴平を滑稽味も交えつつ憎らしさもまずまず。他にも、女髪梳お幸の歌江や市蔵のおででこ伝次、また鳶の者達などにも江戸の世話物らしい雰囲気が感じられ、その点でも楽しむことが出来た。

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三月大歌舞伎(昼の部) [観劇(伝統芸能)]

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歌舞伎座百二十年 三月大歌舞伎(昼の部)

歌舞伎座 2008年3月9日(日)11時開演 1階16列27番

1.春の寿
 三番叟 長唄囃子連中
 萬歳 竹本連中 囃子連中
 屋敷娘 長唄囃子連中
幕開けは、踊り三題。

「三番叟」は、まず我當の翁と進之介の千歳が登場するが、進之介は十三代目仁左衛門に「身体を真っ直ぐ左右対称に」と教わったらしいが、残念ながらそうなっていない。三番叟は翫雀と歌昇で、切れよりは柔らかみを感じさせつつもポイントを押さえてきちんと踊り進み、こちらはなかなか楽しめた。
「萬歳」は、人形浄瑠璃の景事から移されたもので、往来で商売繁盛を願って踊る大和萬歳の姿。梅玉は、持ち前の品良くおっとりとした風情を見せる。
締め括りの「屋敷娘」は、大名屋敷から宿下がりする娘二人の踊り。孝太郎、扇雀ともに少しバタバタとした感じはあるものの、程良く華やかさと娘らしさがあってまずまず。


2.一谷嫩軍記 陣門・組打 一幕
まずは藤十郎の小次郎・敦盛だが、芸の力できちん若武者になっており、品の良さ、哀れさを素直に感じさせるのは、改めて凄いことだと感心しきり。

一方の團十郎の熊谷も、無骨さの中から切なさが真っ直ぐに伝わってくるような芝居。敦盛と玉織姫の亡骸を海に流し遺品を馬に括り付ける幕切れまで、見物としても気持ちを切らすことなく泣かせてもらえた。

魁春の玉織姫も一途さを感じさせて十分。市蔵の平山武者所は熱演で予想以上に手強さはあるが、もう一段の嫌らしさがあってもよいか。


3.女伊達 長唄囃子連中
吉原仲之町を舞台に、女伊達が喧嘩を仕掛けてきた男伊達をあしらいながら踊る。菊五郎の女形舞踊は久々という気もするが、年増の色気と女伊達の意気地を見せて華やかな安定感がある。また、傘を使ったり様々なトンボを組み合わせた所作ダテも、いかにも菊五郎劇団らしくサービス精神満点で楽しめた。


4.夕霧 伊左衛門 廓文章 吉田屋 竹本連中 常磐津連中
仁左衛門の「吉田屋」は平成10年の襲名披露、平成15年の南座顔見世と観てきたが、今回は一段と手に入った余裕のようなものが感じられる。物語自体も夕霧とのやりとりも本当にバカバカしく他愛ないものだが、それをこちらもニコニコしながら眺めていられる雰囲気が嬉しい。

福助の夕霧は、全体のおっとりした空気に収まりきれない部分もないわけではないが、初役としてはまずまずかと思う。左團次の喜左衛門は羽目をはずさずきっちり。秀太郎のおきさは、やはりこの芝居らしさを体現して空気感を作っているのが流石。


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3月歌舞伎鑑賞教室 [観劇(伝統芸能)]

3月歌舞伎鑑賞教室「歌舞伎へのいざない」

2008年3月8日(土)15時開演 国立劇場(大劇場) 1階9列24番

これまで国立での鑑賞教室といえば6月、7月で、主に高校生対象ということだったらしいが、今回初めて3月に開催されることに。4月から新たなスタートを切る社会人、学生を始めとして様々な世代に歌舞伎を身近に感じてほしい、とのこと。

1.解説 ようこそ歌舞伎へ 澤村宗之助
高校生向けでないこともあってか、解説もいつもと違う。若手から中堅の役者(今回は宗之助)が進行するスタイルはそのままだが、今回は阿国歌舞伎を描いたパネルの前で説明をしていて一旦「停電?」と言って暗転した後で灯りが点くと、絵から抜け出した阿国(京妙)が登場し、その後は阿国以降の歌舞伎の歴史を一緒に振り返る、という演出。この阿国(と言うか京妙)が最近のお笑いネタなどもふんだんに織り込みながら弾けまくる。高校生向けだと少し濃すぎるかもしれないが、寸劇的なベタさ加減に大笑いしたりニヤリとしたり。「国姓爺合戦」の虎退治や(吉五郎の和藤内)、京紫の「鷺娘」、また楽屋での支度姿なども見せるなど、盛り沢山な内容で楽しめた。


  竹田出雲=作
2.芦屋道満大内鑑 -葛の葉- 一幕二場
 第一場 安倍保名内機屋の場
 第二場 同  奥座敷の場
芝雀の葛の葉は二回目とのことで前回の憶えはあまりないが、姫、葛の葉ともに程の良い古風さがあり、保名への想い、母としての苦悩をしっとりと見せ、十分に本興行レベルの出来。曲書きも上手すぎないところが過剰な外連味がなく却って好ましい。

種太郎の保名は、さすがに芝雀との釣り合いが苦しく勉強芝居になってしまうと思っていたが、思っていたよりは違和感なく観ることができた。精一杯ではあるし、対となった場面に無理がないわけではないものの、丁寧にきちんと進める芝居には好感が持てた。幕切れに葛の葉を追う場面でも、童子を抱く姿の収まりはともかく、葛の葉を想う一途さはなかなかのものを感じさせてくれた。


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2月文楽公演(第1部・第2部) [観劇(伝統芸能)]

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2月文楽公演(第1部・第2部)
国立劇場小劇場 2008年2月17日(日)

【第1部】 6列25番

冥途の飛脚
 淡路町の段
 封印切の段
 道行相合かご
「淡路町」は何度も観ているが、何と言っても当時の飛脚屋商売の実態が極めてリアルに描かれているのが面白い。奥の英大夫は、幕切れの米屋町の場面で忠兵衛が梅川に会いに行くかどうか「措いてくれうか、往て退けうか〜」と迷うところが、絶妙なリズミカルさの中に運命の分岐点が見えるようで味わい深い。

「封印切」は、綱大夫が落ち着いたトーンでじっくりと語りきることで、改作物と異なり忠兵衛の弱さが浮き彫りになる。

「道行相合かご」も、改作物の「新口村」のように新たなドラマを展開するのではなく、霙交じりの中で駕籠を帰してからのやり切れない二人の様子を描いているが、道行というスタイルながら現実感のある場面が展開される。

人形は、玉女の忠兵衛、紋寿の梅川で、決して派手さはないものの、しっかりとしたまとまりのある舞台を見せてくれていた。



【第2部】 7列33番

1.二人禿
京島原の春景色の中、二人の禿が羽根突きや手鞠に興じる姿が描かれる。義太夫は南都大夫、文字栄大夫、始大夫、睦大夫、希大夫。三味線は喜一朗、清志郎、龍聿、寛太郎。人形は勘弥と清三郎の禿で、ほのぼのと軽やかに踊り進み春らしい風情で幕となる。


2.鶊山姫捨松
 中将姫雪責めの段
中将姫伝説の物語中でも大きく盛り上がる場面の一つが、この継子苛め。冷静になって見ると、継母岩根御前の責め方は常軌を逸したもので、却って中将姫に同情が寄せられる作りになっている。それにしても、中将姫の実の父である豊成卿が、全てを知りながら天皇に危害が及ぶのをおそれて事を荒立てずにいた、というのはなかなか理解しがたいところではある。

語りでは、やはり切の嶋大夫の繊細さが耐える中将姫の哀れさをよく現していた。人形も、やはり文雀の中将姫の責められてもなお凛とした品の良さが印象的。


3.壺坂観音霊験記  土佐町松原の段
 沢市内の段
 山の段
明治期に書かれた浄瑠璃だが「三つ違いの兄さんと・・・」が人口に膾炙した人気曲。

まず惹きつけられるのは、言うまでもなく簑助のお里。沢市に対する健気な想いや身を投げて後を追うまでの激しさなど、いずれもその純粋さが細やかな動きから伝わってくる。勘十郎の沢市も、必要以上にいじいじとした感じにはならず、やり切れなさをむしろ真っ直ぐに見せる。

義太夫は「沢市内の段」での住大夫が圧巻。しみじみとした語りでお互いの心を思い遣る様子を聞かせ、じわりと泣かされた。「山の段」は病気休演の伊達大夫の代わり千歳大夫が語ったが、丁寧な語りで物語の展開をきちんと語ってくれていた。


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2月文楽公演(第3部) [観劇(伝統芸能)]

2月文楽公演(第3部)
国立劇場小劇場 2008年2月16日(土)18時開演 7列25番

  二世竹田出雲・三好松洛・並木千柳=作
義経千本桜
  伏見稲荷の段
  道行初音旅
  河連法眼館の段

今月の第3部は千本桜の忠信編。

「伏見稲荷」では、文楽の方が全体の物語構造がくっきりすること、また改めて歌舞伎側で加えられた入れ事等を意識するのも、いつものことながら面白い。

「道行初音旅」は、呂勢大夫、咲甫大夫の若手二人の爽やかな語りに清治の三味線が芯と華やかさを加えてまずまず。

最後の「河連法眼館」では、奥で咲大夫が自在に語るのを燕三がむしろ抑え気味に支えることで良いバランスで盛り上がる。

人形では、やはり勘十郎の狐忠信のダイナミックな動きが印象的。和生の静御前もおっとりとした雰囲気でまずまず。

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二月大歌舞伎(昼の部) [観劇(伝統芸能)]


初代松本白鸚二十七回忌追善
歌舞伎座百二十年 二月大歌舞伎(昼の部)

歌舞伎座 2008年2月3日(日)11時開演 1階16列8番

1.小野道風青柳硯 柳ヶ池蛙飛の場 一幕
小野道風が柳に飛びつく蛙を観て悟りを開くという良く知られた逸話(むしろ花札の図柄が有名か)を題材にした義太夫狂言だが、本興行では21年振りという大変珍しい演目。当時、初代吉右衛門と白鸚で上演された縁で今回の追善興行に取り上げられたものらしい。

小野道風は、流罪となった小野篁の遺児で大工をしていたところ陽成帝の名で公卿となったとの設定でいきなり登場するが、梅玉はこれを基本的な上品さをベースにしつつそれなりの雰囲気で見せてくれる。

対する三津五郎扮する独鈷の駄六は、手強さを見せる敵役で、大工時代の仲間だが謀反を企む橘逸勢側につき道風を味方にしようとして近づくが、道風が拒否すると相撲になるが打ち負かされ池に投げ込まれる。その後水草まみれで出てきて蛙跳びをするなど滑稽味も見せるが、こちらも踊りの名手らしく下半身がしっかりしているところなどにも面白い存在感がある。他愛なくつかみどころのない不思議さがある物語ではあるが、まずまず楽しませてもらえた。



2.菅原伝授手習鑑 車引 一幕
松緑の梅王丸、錦之助の桜丸、橋之助の松王丸という三人に、歌六が時平を初役で勤める。

松緑はニンにも合っており、台詞の張りもまずまず。錦之助は悪くはないのだが、落ち着きの無さのようなものが少しだけ感じられたのが気になった。橋之助もすっきりとはしているが、もう一段の太さが欲しい気がする。歌六は初役という感じはなくそれなりだが、こちらも公家悪としての存在感というか、もう一段の大きさ、怪異さがあればなお良いか。



3.積恋雪関扉 常磐津連中
常磐津所作事だが舞踊劇と言えるほどの大曲で、それだけに上演される機会は意外と少ない。ただ、筋書のインタビューで吉右衛門が言う「荒唐無稽だがそれだけに歌舞伎らしい」というのは、本当にその通りだと思う。

関兵衛実は大伴黒主はその吉右衛門が平成16年11月以来となるが、踊り手としては必ずしも器用ではないにしても、それを超えた大らかさや古風な味わい深さが十分に感じられ、期待に違わぬ出来に満足。

前回は、小町姫が魁春、墨染の精が福助だったが、今回は福助が二役。全体として抑制が良く効いており神妙に勤めている印象で、必要な華やかさや桜の精らしい幻想的な雰囲気もまずまず。



4.假名手本忠臣蔵 祇園一力茶屋の場 一幕
夜の部の熊谷同様、こちらも昨年2月歌舞伎座での通しでは吉右衛門の充実した舞台が記憶に新しいが、それに対抗するように今回は幸四郎が勤める。

その幸四郎は、何度も経験したこの役であり当然に破綻はなくそれなりの存在感を見せる。ただ一方で、どの場面がということでなく全体としてどこかモダンな由良之助と言うか、義太夫狂言らしさが薄い。逆に由良之助らしい余裕と色気では、やはり吉右衛門に軍配が上がるように思えてならない。

染五郎の平右衛門は、ニンとしては本当は少し違うのかもしれないが、それでも昨年の巡業で見たときに比べると格段の進歩で進め方にも落ち着きが感じられ、妹を思いやる気持ちが素直に伝わってくる。対する芝雀のお軽は、特に高麗屋親子と比して古風さが目立つのも好ましく、柔らかい切なさを表現して十分な出来。



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二月大歌舞伎(夜の部) [観劇(伝統芸能)]

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初代松本白鸚二十七回忌追善
歌舞伎座百二十年 二月大歌舞伎(夜の部)

歌舞伎座 2008年2月2日(土)16時30分開演 1階16列19番

1.寿曽我対面 一幕
富十郎の工藤は昨年末の南座顔見世で観たばかり。膝は相変わらず良くないようだが、それ以外は姿、口跡とも堂々たるもので、やはり当代では一番かも。いつもは黒綸子の衣裳なのが、白鸚追善なので白地にしたとのことで、ちょっと珍しい。

三津五郎の曽我五郎は、思っていたよりはるかにきちんと荒事らしく勤めてなかなか。橋之助の十郎は、柔らかみはそれなりだが、少し五郎との間が合わない瞬間があるように感じられた。

歌昇の朝比奈もニンに合い口跡も気持ち良くまずまず。芝雀の大磯の虎、孝太郎の化粧坂少将とも、おっとりとした風情に程の良い華やかさもあってなかなか。


2.初代松本白鸚二十七回忌追善 口上 一幕
雀右衛門、幸四郎、吉右衛門、染五郎、松緑という血縁者だけで、歌舞伎座の広い舞台には少し寂しい感じもあったが、これはこれで追善らしいしみじみとした口上となった。


3.一谷嫩軍記 熊谷陣屋 一幕
昨年9月歌舞伎座秀山祭での吉右衛門による上質な演技がまだ記憶に新しいところだが、今回は白鸚追善で幸四郎が勤める。

その幸四郎だが、しばしばくぐもった口跡が気になる義太夫狂言としては台詞ははっきりしている方だと思うが、それ故にかえって前半からの思い入れが強すぎて底が割れてしまうというか、抑制が足りないように感じられたのは残念。

その他周囲を固める顔ぶれは、芝翫の相模、魁春の藤の方、段四郎の弥陀六、梅玉の義経と、いずれも充実した出来。芝翫は少し芝居がさらさらと進んでしまう箇所があるが、全体としては流石に立派。また梅玉の義経も品の良さは特筆すべきレベル。


4.新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子 長唄囃子連中
先月の「連獅子」に引き続いての石橋物だが、染五郎の奮闘振りが見もの。

前シテの弥生として登場すると、想定以上に綺麗な姿に少し驚く。線の細さと骨っぽさが目についたり、手を突っ張ったところでのバランスが少し悪かったりするところは少々柔らかみに欠けるのが気になるものの、女形として一応形にはなっていたように思う。

一方後半の獅子ではきちんと勢いがあり、毛振りも十分にリズミカルではあったが、こちらも毛先の動きや極めの姿勢にもう一段整然とした美しさがあればなお良いかと思う。素養も華もあるとは思うので、今後とも引き続き精進を願いたいもの。

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新春浅草歌舞伎(第2部) [観劇(伝統芸能)]

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新春浅草歌舞伎(第2部)

浅草公会堂 2008年1月26日(土)15時開演 1階う列9番

1.祇園祭礼信仰記 金閣寺 一幕  中村雀右衛門指導
亀治郎の雪姫は、指導した雀右衛門を十二分に意識した芝居で、動きだけでなく口跡まで似せているように聞こえてくるのが不思議。こうした経験を経て徐々に自分の型を作り上げていくのだろう。松永大膳を勤める獅童はニンにも合っており第一部の南郷以上に危なげなく見え、こちらも一安心。男女蔵も十河軍平なのでまったく違和感なく勤めており、まずます。


  三世瀬川如皐 作
2.与話情浮名横櫛 木更津海岸見染の場/源氏店の場 二幕
愛之助の与三郎は、日本駄右衛門以上に仁左衛門写しの雰囲気だが、若干の柔らかみが出るところが少し江戸風からは離れる感じがしないでもない。とは言え、初演としては十分な出来だろうと思う。対する七之助のお富も本人が影響を受けたであろう玉三郎の影を色濃く感じる。流石に生硬さが目についてしまい訳ありな感じが出にくいのはやむを得ないところだが、こちらも頑張っていることは良く伝わってきた。

男女蔵は和泉屋多左衛門で、こちらは土佐将監ほどの無理はなくまずまず。蝙蝠安の亀鶴は少し真面目すぎて役本来のチンピラ風な雰囲気が薄い感じで、逆にこの役の難しさを感じてしまった。


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新春浅草歌舞伎(第1部) [観劇(伝統芸能)]

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新春浅草歌舞伎(第1部)

浅草公会堂 2008年1月20日(日)11時開演 1階あ列23番

  近松門左衛門 作
1.傾城反魂香 土佐将監閑居の場 一幕
勘太郎の浮世又平は、昨年11月歌舞伎座での吉右衛門の深さとはまったく異なった進め方で、前半を中心に時として感情表現がマンガ(劇画)的と感じるような「熱さ」で押しまくるが、それはそれで嫌味はなくむしろ好感が持てた。

対する亀治郎はそれよりは随分と落ち着いてしっかりした感じで、姉さん女房的雰囲気だが、出来としては十分。土佐将監は男女蔵だが、貫禄と陰翳を見せるべき老け役をさせるのは少々気の毒に思えた。巳之助は修理之助を勤めるが、絶対的な経験不足は否めず舞台に出ているだけで精一杯という感じ。今後に期待。


  河竹黙阿弥 作
2.弁天娘女男白浪 浜松屋店先より稲瀬川勢揃いまで 一幕
浜松屋では、まず七之助の弁天が不良少年ぽい浮ついた突っ張り方が良く合っていて十分楽しめる。獅童の南郷も思ったよりはるかに自然な出来で一安心。愛之助の日本駄右衛門は仁左衛門に習ったとおりとい感じではあったが、きちんと出来ていてしっかりと舞台を締めていた。

勢揃いは亀治郎の忠信利平、勘太郎の赤星十三郎が加わって危なげなく華やかさも増しながら打ち出しとなった。

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