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四月大歌舞伎(夜の部) [観劇(伝統芸能)]

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歌舞伎座百二十年 四月大歌舞伎(夜の部)

歌舞伎座 2008年4月12日(日)16時30分開演 1階17列24番

  真山青果 作 真山美保 演出
1.将軍江戸を去る 一幕三場
昨年12月南座顔見世で観て間がないが、今回は全く配役が違う。

まず徳川慶喜は、南座での梅玉が将軍家故の孤独を抑制的にで表現しながら台詞は朗々と歌い上げていたのに対して、今回の三津五郎は初役とは思えぬ落ち着きがあり、さらに薩長に対する屈辱感に揺れる気持ちをより人間味をもって表現していたように思う。

続いて山岡鉄太郎だが、南座では我當が熱気と一途さを感じさせ安定感を見せていたが、今回の橋之助は酔態の勢いや若さをよく現しており、感情が昂ぶったところで時として台詞が少々上っ調子になることを除けば、こちらも初役としては十分。こうした少し現代的な芝居に意外と向いているのかも。

高橋伊勢守は最近はとみに幅広い役どころを求められている彌十郎で、きちんとこなしてはいると思うが、ややもすると洒脱さが世話に流れてしまうように見えるところもあり、もう少し高位の幕閣らしい威厳といったものも見せた方が舞台が締まるようにも思えた。


2.歌舞伎十八番の内 勧進帳 長唄囃子連中
富樫は比較的多く演じている仁左衛門だが、弁慶は平成13年1月松竹座以来で、東京では何と21年ぶりとのこと。全体に声を低めつつ明瞭な口跡で、ある意味予想どおり知謀に長けた弁慶像ではあるが、勿論力強さや大きさにも不足感はない。また、進め方が全体にゆっくりと落ち着いており、特に山伏問答などではそれが顕著で、最初は緩やかに入って徐々に緊迫感を高めていくやり方で、これはこれで好ましい。それでも上演時間は1時間15分と他の上演とあまり変わらないのは、全体としてきちんと緩急がついているということだろう。

勘三郎の富樫は、その山伏問答など特に前半では仁左衛門との掛け合いも良い感じで付き合っているが、それ以外のところでは時として台詞も動きも大仰になり「いかにも中村屋」な感じになってしまうのが惜しい。

玉三郎の義経も20年振りで私自身も初見だが、本人が筋書のインタビューで「能では子方の役」といっていたように、少年のような雰囲気と高貴さを感じさせるが、それが他の二人の芝居と合っているかというのはまた別の問題ではある。ただ「判官御手を取り賜い・・・」などではきちんと想いのこもったものを感じた。


  井上ひさし 作「手鎖心中」より 小幡欣治 脚本・演出 本間忠良 演出
3.浮かれ心中 二幕
   中村勘三郎ちゅう乗り相勤め申し候
平成13年大阪松竹座での上演以来2度目の観劇。平成9年と14年は観ていないので、歌舞伎座では初見。

勘三郎は「今年は子年だし鼠に乗って宙乗りする芝居もいいなあ」ということで取り上げたらしいが、こういう芝居は中村屋らしくても全く問題ない。戯作者として有名になりたくてあえて馬鹿なことを真剣にやる、といったテーマを考えすぎても却って浮いてしまいそうなので、あまり何も考えずに笑って楽しめる芝居であって構わないのではないかと思う。最後のちゅう乗りでは、前回と同様に猿之助のことにも触れながら、花吹雪や手拭いを撒いて大盛り上がり。

太助(後の式亭三馬)は、前回の橋之助に代わり初演と同じ三津五郎で、勘三郎との掛け合いにレベル感の違いが無いのが良い。籠釣瓶のパロディなども含め、細かいところも達者で楽しませてくれる。

前回まで福助が二役を勤めたうち、花魁帚木は今回は七之助。籠釣瓶ばりの花魁道中も、身請けされてから計略を巡らすところも、思ったより危なげない。一方、栄次郎と一年限りの約束で女房になるおすずは今回は時蔵で、おっとりとしたいかにも人の良い雰囲気ながら弾けた滑稽さも垣間見せてくれ、舞台全体に膨らみの出るような楽しさがあった。他には、序幕で出た遣り手お辰の小山三が良い味。



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