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婦系図 [観劇(その他)]

新派公演「婦系図」
三越劇場
2007年8月12日(日)11時30分開演 1階4列21番

なかなか観る機会の少ない新派。その中でも言わば古典中の古典であるこの作品だが、正直なところ実際の舞台を観るのは初見。

以前に演舞場で見た「京舞」とは異なり明治期の泉鏡花作品であるだけに、「旧派」である歌舞伎に対する「新派」として成立しながら未だその影響が色濃い時代の雰囲気を感じることができた。何と言っても緞帳でなく定式幕が引かれ、舞台の音楽も黒御簾を中心に進行し、多くの場面で清元などの余所事浄瑠璃が効果的に用いられる。特に「湯島境内」では「雪夕暮入谷畦道」(三千歳直侍)を下敷きにして芝居が進行し、幕開きに出てくる声色師が直侍を「橘屋の声色」で唸ってみせるなど、歌舞伎好きには極めて入りやすい世界が展開される。

そんな作品を、今回の新派では多くが初役で勤めているというが、何せ初見であるため比べようがない。それでも、芝居のレベルは総じて高くきちんとした舞台を見せてくれるのは、伝統を保ちながら少人数の凝縮された世界で頑張ってきているためかもしれない。

今やそんな新派の看板女優の一人となっている浪野久里子は、さすがに何度も演じてきているだけのことはあり、新派見物の素人にも独特の雰囲気を十分に感じさせてくれるのは嬉しい限り。一方の早瀬主税は、平成に入ってからは孝夫時代の仁左衛門、吉右衛門、團十郎、近藤正臣などが演じている。今回は初役の風間杜夫だが、新派出演の数を重ねてきたこともあってか、小劇場や映像作品から想像されるよりも違和感ははるかに小さく、「新派大悲劇」らしい締め括りにも十分に感情移入できて楽しませてもらえた。

終演後にまず思ったのは、やはりもう少し新派を観る機会を持とうかなということ。せめて初代八重子の舞台でも観ていればと今更言っても仕方ないが、歌舞伎や文楽と比べてもかなり限られた客層に支えられていると思われることからも、生き残りの姿がなかなか見えにくいのは正直なところだけに、今の舞台を貴重な機会と考えたい、と思った。

もう一つ、あまり脈絡なくぼんやりと考えたのは、上記の顔ぶれを別にして、中堅・若手を中心に早瀬主税役に相応しい歌舞伎役者はだれかいないかな、ということ。染五郎、愛之助、錦之助などとつらつら思い浮かべて想像してみるのは、意外と面白かった。


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