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八月納涼大歌舞伎(第一部) [観劇(伝統芸能)]


八月納涼大歌舞伎(第一部)
歌舞伎座
2007年8月13日(月)11時開演 1階17列24番

この日は会社の夏季休日で、一部・二部と観劇。緞帳の海と鳥の姿に、夏らしい感じを受ける。

  指宿大城 作 田中喜三 脚色 福田善之 演出
1.磯異人館 二幕六場
最初に題名だけ聞いたときは、何故かおどろおどろしい話かと思ってしまった。実際には、明治百年記念懸賞演劇脚本当選作の一つであり、鹿児島在住の指宿大城という在野の作家の作品で、明治維新期の鹿児島を舞台にした若者群像劇。昭和62年2月に当時31才の勘九郎(現・勘三郎)により初演されて以来の再演になる。

まずは薩摩琵琶と琉球音階らしきBGMが印象的で、これによって見物は当地の雰囲気に自然と引き込まれる。主人公は生麦事件で詰め腹を切らされた武士を父を持つガラス職人・周太郎で、琉球王女・瑠璃との初々しい恋が時代に翻弄されていく様が描かれるが、これが気恥ずかしくなく素直に感情移入できる舞台になっていた。周太郎を演じる勘太郎は文字通り体当たりの熱演で、幕切れまで極めて好感度が高い演技を見せる。瑠璃役の七之助も、時として女形で見せる生硬さを感じさせず役本来の高貴さと切なさを表現していた。

他には、友として全てを飲み込んで陰に陽に支援を惜しまぬ友人・五代才助を演じる猿弥が、儲け役をきちんと活かして好演。それにしても遠目からの容貌とせりふまわしも歌昇に似ている気がして仕方がなかった。周太郎弟・周三郎役の松也、集成館総裁・松岡十太夫役の橋之助、その娘で周三郎を慕う加代役の芝のぶ、イギリス人(!)技師・ハリソン役の亀蔵、敵役である作事奉行・折田要蔵役の家橘など、それぞれ役どころをきちんとこなして過不足なし。

物語全体としては悲劇ではあるのだが、周太郎を筆頭とした若い登場人物達を若い役者達が真っ直ぐに演じていることに、清々しさを感じる舞台となっていた。

  水上勉 作
2.越前一乗谷 竹本連中 囃子連中
こちらも新作と言うか、水上勉が初めて書き下ろした舞踊劇で、昭和48年に菊之助(現・菊五郎)と尾上菊之丞の舞踊会で初演されて以来の再演。

題材は、戦国武将・朝倉義景とその妻・小少将の悲劇。尼僧姿の小少将が登場しかつての越前一乗谷を回想する中で、織田方との合戦、義景・小少将の別れ、秀吉の側女から出家するまでを描いている。

特徴的なのは、音楽が全て竹本によるというところで、力強さと哀切さが感じられて嬉しい。一方で舞台の展開は、傾斜舞台と盆廻しを多用しながら場面転換を図っていくが、残念ながら散漫さは否めず、正直なところすこしうつらうつらしてしまう部分もあった。名もなき郎党で勘三郎と三津五郎が絡む箇所などは贅沢さは確かにあるが、橋之助の義景、福助の小少将とも、舞踊の魅力だけで見物を釘付けにするまでには至らず、上演時間としてもやや長いように感じてしまった。


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