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八月納涼大歌舞伎(第二部) [観劇(伝統芸能)]

八月納涼大歌舞伎(第二部)
歌舞伎座
2007年8月13日(月)14時45分開演 1階2列12番

引き続き二部を観劇。チケット確保時から人気が高く、いつもの1階二等席が確保できなかったので、やむなく1等席を取ることにした。

  山本周五郎 原作 矢田弥八 脚色 大場正昭 演出
1.ゆうれい貸屋 二幕
五月歌舞伎座昼の部の「泥棒と若殿」に続く山本周五郎作品。前回のほのぼのした人情物と比べると、今回はかなりコミカルな仕立てになっている。

主人公の桶職人・弥六は、腕は良いが怠け者というありがちな設定だが、幽霊に翻弄されながら改心するまでの様を三津五郎が肩に力の入らぬ芝居で好演。対する生前辰巳芸者であった幽霊・染次は福助で、極めてニンに合っているし、とりあえずは笑いながら楽しんで観ることはできた。ただ、酒を飲んでのはしゃぎっぷりや嫉妬に狂った姿など、総じて言えば「怪演」の域で、滑稽世話物とは言えやり過ぎ感は否めなかった。

他の幽霊役はなかなか良い味を出していて、勘三郎はは少し目立ちすぎだがさすがに軽妙にこなしていたし、爺婆の幽霊・権一と玉之助の影の薄さが味わい深かった(失礼)。弥六女房お兼の孝太郎、家主平作の彌十郎など周囲の役者はまずまず。

  渡辺えり子 作・演出
2.新版 舌切雀 -花鳥の森・夏の星- 一幕
襲名直前の勘九郎最後の舞台で観た「今昔桃太郎」以来の渡辺えり子による書き下ろし。おとぎ話ベースのコミカルな舞踊劇、という点は共通している。

ただ、前回はどこか昔話ならではの素朴さを残していた気がするが、今回は幕開きから派手さ満開。鳥の国の祭という設定で、大階段や色々な鳥たちの扮装に驚かされるが、何故か「海神別荘」の舞台を思い起こしてしまった。その後、村に住む森彦(勘太郎)・お夏(七之助)の家の場面でも、奇抜なデザインの大道具など違和感は感じさせつつも、まずまず楽しめる。

芝居の方は、次から次へと趣向満載で笑わせてももらえたし、取りあえずは飽きることなく最後まで観ることはできた。荒唐無稽な設定の各役柄や、ペンギンや白鳥の湖などの踊りまでこなす各役者達、普段はやらないクラシックの曲まで奏でる黒御簾、さらに清太夫以下の竹本まで、それぞれが慣れない書き下ろしの作品に大真面目に取り組む奮闘振りは伝わってきたし、森彦の強欲な母・玉婆を勤める勘三郎は、言わば座頭の責任感で舞台を引っ張っていたとは思う。また、今回も勘三郎と三津五郎が「三社祭」らしき所作をするところなどは、やはり目を惹くものがある。さらに物語も、奇抜さだけでなく人情の機微や素朴な教訓、さらに意外な展開もそれなりに織り込まれている。

ただ、やはり全体としては散漫になっていたという印象は拭えないし、練り直してもらった上でもう一度観たいという気持ちにはあまりなれなかったのは少々残念。羽目を外すこと自体には寛容なつもりではいるのだが、今回は少しお遊びが過ぎたという感が強い。見終わって最初に思ったのは「俳優祭の演し物みたいだな、これを2週間もやるのか」ということだった。ただ、伝統の力を活かしながら新たなものを創造する試みは並大抵なことではないだろうとは思うので、またのチャレンジに期待してみたいところではある。


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