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ダンダンブエノ「砂利」 [観劇(その他)]


劇団♫ダンダンブエノ 双六公演「砂利」


かめあり・リリオホール 2007年7月6日(金) 18時30分開演 1階12列5番

作=本谷有希子
演出=倉持裕
出演=坂東三津五郎、田中美里、片桐はいり、酒井敏也、山西惇、近藤芳正

いつだったか忘れたが、チラシで見て「坂東三津五郎初の小劇場出演」というのが気になってはいたものの、そのままにしていた。今週になって、めざましテレビで本谷有希子の特集がありそこで紹介されているのを見て、やっぱり行ってみようかと気持ちが動いた。すぐにチケットを探すと青山・スパイラルホールでの本公演は既に完売だったが、地方公演のスタートという位置付けで実質初日となる亀有での公演には空きがあり、何とかチケットを入手。会社を定時より少し早めに出て会場に向かう。

ホールには駅前再開発で出来たイトーヨーカ堂の最上階9階に店内のエレベーターで上がっていくが、場内はなかなか立派。幕は下ろされておらず、舞台上に古い二階建ての家と砂利敷きの庭というセットが置かれている。

近藤芳正が主宰する年に一回の公演の6回目ということだが、公演ごとに出演者と脚本家、演出家を決め、出演者のエチュード(即興芝居)をしながら俳優毎のイメージを掴んで当て書きする形で作られるのが特徴とのこと。パンフレットの各俳優へのインタビューにほぼ共通して「意地悪目線」「見透かされた気分」などの言葉があるのが面白い。

結果として気鋭の脚本家・本谷有希子が書いた登場人物は、亡くなった父の介護疲れに加え少年時代にいじめた相手の復讐におびえる兄・蓮見田(坂東三津五郎)、父の介護を兄に押しつけた負い目を感じながら兄の面倒を見る弟・孝生(近藤芳正)、蓮見田の身重の恋人でおびえを共有しつつ少しテンションの高い女・有里(田中美里)、兄弟の家の同居人で覗きが趣味の肺疾患の男・戸所(中西惇)、箱を大事に抱えて隠し場所を探している男・小森橋(酒井敏也)、そして有里の姉として登場する女・際(片桐はいり)。

ここからの展開はネタバレになるので控えるが、確かにそれぞれの役者の個性を生かした舞台が出来上がっている。小劇場らしい輝きが際立っている片桐はいり、個性を出しつつ微妙に脇に廻っている感じの中西惇、酒井敏也、味わいはあるが主宰疲れかもっと弾けてもよさそうな近藤芳正、芝居の枠に収まらない妙な存在感を見せる田中美里、そして復讐や男女関係に絡む大きな事態の変化にも喜んだり怒ったりできない男という役柄を誠実に勤める坂東三津五郎。

この「極端に感情の動かない」という部分の奇矯さが、今回の芝居の大きなテーマになっている。ただ、インタビュー記事で三津五郎や中西惇も言及しているが、私自身にとっても決して理解できなくはないという感覚もあり、どこか落ち着かない気分にさせられるが、それは当然ながら脚本そして芝居の狙いだろう。

またそのこととは別に、感情の起伏の無い男を歌舞伎役者が演じることの意味にも思いを巡らしたりしてしまった。もっとも、この日の観客で歌舞伎座での三津五郎を観たことのある人は意外と少なかっただろうが。

他にも、蓮見田と孝生、有里と際という兄弟、姉妹間の独特な感情と葛藤、同じように妄想の世界に生きながらタイプの違う戸所と小森橋、といった様々な関係性やテーマが垣間見えるが、説明的にもなり過ぎず、かつ消化不良にならないのは演出の功績かも。

上演時間は休憩無しの2時間強だったがそれほどだれることもなく、最後はカーテンコール2回。完全に持って行かれた、大感激したということではなかったものの、急遽チケットを買って亀有まで来た甲斐はあったかな、と思える舞台だった。


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