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京劇西遊記 火焔山 [観劇(その他)]


京劇西遊記 火焔山
東京芸術劇場 中ホール
2007年6月30日(土)16時開演 1階B列21番


京劇といっても映画「さらば、わが愛/覇王別姫」を観たくらいが精一杯で、何とか生の舞台を観たいと思いながらこれまで何故か機会が無く、ようやくその思いが叶った形。今回は吉林省京劇院による公演で、パンフレットを見るとスーパー歌舞伎との競演という記述があり、「新・三国志」シリーズで素晴らしい立ち回りを見せていたのはここのメンバーだったのかと気付く。この劇団自体が全中国の中でどのような位置付けにある団体なのかは今一つ定かではなく、また本作もお馴染みの題材を元にした1980年の新作であり古典劇でないのは少し残念だが、主催者でもある日経新聞のネット記事でも「入門編としてはうってつけ」とあり、まずは観てみないと始まらないと思いながら開演を待つ。

会場の東京芸術劇場自体も訪れるのは初めて。大阪梅田のシアタードラマシティを一回り小さくしたようなイメージ。席は前から2列目で、舞台脇の字幕表示も見難いことはなく一安心。

開演に際しては火焔山の存在とロケーションに関する日本語でのナレーションがあり、その後幕が上がって芝居が始まる。舞台上手奥に言わば黒御簾的な音楽を演奏するメンバーが居るが、打楽器を中心とした鳴物は伝統楽器のようだが、弦楽器的なものやSE的な音響については電子楽器を活用していた。

物語は以下のとおり。玄奘三蔵一行が西域の火焔山にさしかかると日照りで民も苦しんでおり、一行もその暑さ故に山を越えられない。芭蕉洞に住む鉄扇公主(羅刹女)の持つ芭蕉扇だけが炎を消せるので孫悟空が借りに行こうとする。彼女の夫・牛魔王と孫悟空は義兄弟の契りを結んでいたが、夫婦の子で暴れ者であった紅孩児が三蔵の肉を食べようとして孫悟空が南海観音菩薩に助けを求め、その導きで紅孩児は改心し善財童子となり天上界に住むことになった。しかし、子供と生き別れることになった夫婦は孫悟空を怨んでおり、願いを聞き入れない。そのため鉄扇公主・牛魔王夫婦と孫悟空たちとで芭蕉扇を巡る虚々実々の駆け引きと争いが繰り広げられるが、最後は南海観音菩薩が童子を夫婦に会わせ、天上界で悟りを開き暮らしている姿に安堵し、芭蕉扇を孫悟空に貸し与える。

見ているとやはりどうしても歌舞伎と比較してしまうのだが、古典をベースにしたストーリー、「見得」と同様の極まりの所作、役柄を象徴する鮮やかな化粧、といった点は良く似ており親近感を感じる。反面、主役級の役者(男女とも)を含めたアクロバティックな動き、主役級の女優による独特の節回しと高音を効かせた歌唱、女形の存在の有無(元来は京劇にもあったわけだが)、などが決定的に異なるのは今更言うまでもないが、実際の舞台を観ると改めてそれらを具体的に認識させられる。

休憩を挟んで二部構成、約2時間強の舞台で、一幕目の後半は少々だれた感じもあったが、終盤にかけて立ち回りの緊張感とお約束の締め括りで楽しませてくれ、客席も十分盛り上がって終演後も2回のカーテンコールがあった。

京劇も明らかに伝統芸能の一つであるわけだが、歌舞伎や文楽と同等に楽しんだり、役者達の演技や力量を云々するにはまだまだ縁も遠く勉強不足なのも正直なところで、今後ともぜひ定評のある劇団による極めつけの古典を中心に観る機会を増やしてみたい、などと考えながら劇場を後にした。


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