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「京都五山 禅の文化」展 [Art]


「京都五山 禅の文化」展
東京国立博物館

先日京都に行った時に招待券を貰っていたのだが、気がついたら会期が来週までということで、最終週は避けたいと思って出かけることにした。

平成館に向かう途中で、4月に改装された表慶館のドームが目に付いた。正面玄関横の百日紅(さるすべり)が鮮やかだった。

平成館に入り2階に上がって音声ガイドを借りて展示室へ。
今回の展示は、室町時代以降に中国に倣って「五山」と称した南禅寺、天竜寺、相国寺、建仁寺、東福寺、万寿寺に伝わる仏教美術品をメインに、鎌倉・室町期を中心とした禅文化を紹介する企画とのこと。ポスター等では"Let's Zen!"などと宣伝していたものの、どうしても対象が地味なので入場者もそれほど多くないかと思っていたのだが、開場に入ってみると意外と人が多くてビックリ。それも、年配のご夫婦やある程度マニア風の30〜40代ばかりでなく、デートのついで的な20代のカップルが散見されたのは意外な驚きだった。

展示は、以下のカテゴリーに別れていた。

第一章 兼密禅から純粋禅へ
第二章 夢窓派の台頭
第三章 将軍家と五山僧
第四章 五山の学芸
第五章 五山の仏画・仏像

一つ一つをゆっくり眺めていると、特に史料的に貴重なものが多くあることに気付かされる。重文の「夢想礎石像」などは、確か歴史の教科書でも見たような憶えがある。袈裟の類は、単眼鏡でじっくり見ると刺繍の細かさに驚かされる。また、第三章、第四章を見ていると、当時の禅寺が言わば大学(研究機関)のような役割をしていたり、中国留学から帰国した高僧達が外交官的な役割を担うこともあったなど、禅僧達の歴史における役割の多様性に強く気持ちを惹かれる。

また、手紙、日記、絵画への賛、経典、額字に至るまで、書の力のダイナミズムも強く印象に残る。書かれる字の姿形、筆の運びが僅かに違うだけでも伝わるものは異なってしまいそうな気がするのだが、500年以上も経った今、単なる記号という意味を超えて書き手の思いが感じられるというのは、なかなか凄いことだと思う。

美術品については、まずは高僧達の木彫のリアリティの強さに圧倒される。かなり凝ったものも少し簡略化したりデフォルメされたものもあるが、いずれも生きていた時の姿を活き活きと映し出していて、その人柄までも偲ばれるような気持ちになる。また、展示の終盤にあった各寺のご本尊である釈迦三尊像等については、やはり素直に手を合わせたいという気持ちにさせてくれるだけの勢いを感じた。

絵画の類も、確かに山水画や詩画図といった品々も貴重なのだと思うが、第五章に展示されていた「十六羅漢図」など世俗的な信仰の力強さを感じさせる作品がむしろ印象に残ったのは、全体に知性や高踏趣味に寄った展示品ばかり見てきたことの反動だったかもしれない。

それにしても、どこまで行っても結構地味なテーマの作品を、出品数のボリューム感も活かしながらそれなりに見せてしまう企画力は大したものだと思う。さらに、出口付近にあった寺々の写真などを見ると、秋に向けた京都観光の壮大なキャンペーンにもなっているのではないか、という気にもさせられた。


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