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金刀比羅宮 書院の美/歌川広重《名所江戸百景》のすべて [Art]

金刀比羅宮 書院の美/歌川広重《名所江戸百景》のすべて
東京芸術大学美術館
2007年8月5日(日)

あちこちでかなり目立つ宣伝をしていたこともあり、早めに行きたいと思っていた。この日は特に予定はなかったので、暑い中を思い切って上野まで出かけることにした。

東京芸大の付属美術館は、東京国立博物館から歩いてすぐのところにあるが、足を踏み入れるのは初めて。

今回の展覧会の見所は、何と言っても「こんぴらさん」として知られる金刀比羅宮の障壁画を約130面も持ち込んで、表書院・奥書院10室の絵画空間を再現していること。両書院とも通常は非公開とのことで、極めて貴重な機会ということになる。なお、音声ガイドは片岡愛之助が担当しているが、歌舞伎役者がこうした役割を勤めるのは珍しい。標準語による解説には微かな居心地の悪さも感じないわけではなかったが、聴いている内に段々と馴染んできた。

エレベーターで3階に上がり表書院から入ると、応挙の襖絵に囲まれた三室が並ぶ。まず「鶴の間」で「稚松丹頂図」「芦丹頂図」がプロローグらしい格調と落ち着きを感じさせるが、続く「虎の間」ではポスター等にもなっている「遊虎図」に取り囲まれ圧倒されることになる。応挙はその格調の高さから時としてインパクトが薄く感じられることもあるのだが、この虎たちには文句なしにドキドキさせられる。その後「七賢の間」を経て、奥書院に進む。

最初は岸岱による「柳の間」「菖蒲の間」「春の間」になるが、応挙・若冲ほどポピュラーではないのに彼らに負けないレベルの高さを感じさせてくれたのは嬉しい驚き。傷んでいた若冲の襖絵を同じ主題で置き換えるという、言わば若冲へのオマージュとして制作されているが、「水辺柳樹白鷺図」「水辺花鳥図」などには岸岱独特の伸びやかさが感じられる。

続いて若冲の手になる「花丸図」に囲まれた「上段の間」になるが、狭い部屋の襖や床の間に細密に描かれた花達がぎっしりと並ぶ姿は、花の香りの濃密さに咽せてしまうような気分になる。

ここで再度表書院に戻ると、また応挙の絵による「山水の間」で描かれる遠景に少しリラックスし、最後は明治初期の画家・頓田丹陵が描いた「富士山図」「富士巻狩図」に囲まれた「富士一の間」「富士二の間」でゆったりと締め括るというように、展示の順番が良く考えられているのが印象的だった。3階から地下2階までエレベーターで降りると、海の神として幅広く信仰されたことを示す船の模型や絵馬などが展示されており、琴平への旅を疑似体験したような気分にさせてもらうことができた。

元々はここまでが今日のお目当てだったのだが、地下2階の反対側では「歌川広重《名所江戸百景》のすべて」を展示していて、これも見逃せない気になって結局見てみることに。入場すると少々混雑もしておりまた閉館時間も迫っていたので、今一つゆったりと見て回ることはできなかったが、刷りの状態も発色も良いものが殆どで、なかなか贅沢な展示。風景写真的な構図の切り取り方の面白さや、幾つかの絵で描かれた動植物の大胆なクローズアップなど、興味深い絵も少なくなかった。

なお、両展示とも結局図録を購入してしまったのだが、特に「金刀比羅宮」の方は、障壁画の拡大表示だけでなく、現地の室内や建物の外観、室内から外部の展望といった写真が秀逸で、お値打ち感が高いと思った。


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