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NODA・MAP「THE BEE」(日本バージョン) [観劇(その他)]


NODA・MAP番外公演「THE BEE」(日本バージョン)
シアタートラム
2007年6月23日(土)19:30開演

家からほど近いキャロットタワーにある劇場のうち、世田谷パブリックシアターはこれまでも何回か足を運んでいるが、シアタートラムの方は今回が初めて。人気のNODA・MAPの公演ではあるが運良くチケットも取れたので、いそいそと劇場へ。

中へ入ると、階段状の客席の下に多目的に使えそうな平場の舞台が広がっており、新しさとシンプルさが感じられる小劇場といった雰囲気。天井から吊されて舞台面に敷かれた大きなベージュの紙が目を引く。ロンドンでの上演時とは異なる舞台装置だったようだが、この大きな紙が時にはバリケード、時には斬り欠いた窓やドア、更には引きちぎられて封筒になるなど、舞台演出における変幻自在な役割を果たしていた。

物語は筒井康隆の小説をベースに、脱獄した殺人犯・小古呂が妻と息子を人質に取り、自宅に立てこもられてしまったビジネスマン・井戸が、犯人の妻と息子の家に立てこもることとなって、次第に暴力と狂気をエスカレートさせていくという、ある種の不条理劇。

芝居の序盤は無力かつ形式主義的なな警察や事態を演出された映像に仕立てようとするマスコミの姿を揶揄的に描き、中盤以降は井戸が暴力に取り付かれ、報復合戦の応酬をしていく様を井戸の側から生々しく描く。

まず前半では、野田秀樹に加え、秋山菜津子、近藤良平、浅野和之という出演者4人が、複数の役を早替わりよろしく瞬時に演じ分ける様が圧巻。一方、後半でのある意味凄惨な場面の繰り返しが儀式化していく場面では、不思議なリアリティと象徴的演技の繰り返しが、得も言われぬやるせなさを感じさせ、客席も静まったまま舞台を見つめる形となっていた。

野田秀樹はパンフレットの巻頭で、叶恭子の登場する夢を悪い夢、叶美香の出る夢をいい夢と定義した上で「どうやらいい夢指向の観客が劇場を支配しているようだ。私はそれが気に入らない」「たまには、涙を流してさっぱりしないで、そんな悪夢も見てください」とコメントしている。今日の観客は野田秀樹の芝居を承知で来ている者が殆どと思われ、いい夢を見ようとするより野田秀樹の意図を汲み取ろうとする客の方が多く、上記のコメントのように突き放す対象となっていたかという疑問は残るが、挑戦的かつ完成度の高い舞台であることは間違いないと感じながら、劇場を後にした。


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