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俳優祭 [観劇(伝統芸能)]

社団法人 日本俳優協会 再建設立五十周年記念
第三十四回 俳優祭
歌舞伎座
2007年5月26日(土)16時30分開演 1階5列29番

知る人ぞ知る「俳優祭」。普段見られないようなパロディ満載の芝居や、役者が売り子の模擬店が出るなど、歌舞伎好きとしてはぜひ行ってみたい催し。ただ、確か2年に1回程度の頻度で、かつ開催日が週末とは限らないので、私もこれまではテレビで見たことがあるばかりで行ったことはなかった。今回は土曜日開催ということもあり、チケット争奪戦は例年以上に熾烈だったようで、今年も最初から諦めていた。
ところが、つきあいの長い友人からチケットがあるとお誘いがあり、思いもよらず初めて現場を体験できることになった。持つべきものは友ということで、感謝感謝。

  伝統歌舞伎保存会主催 研修発表・地域振興
1.「郷土巡旅情面影(くにめぐりたびのおもかげ)」
   企画構成:坂東三津五郎
    上、加賀「勧進帳」(小松市の小・中・高校生による長唄囃子演奏)
    中、肥後「山鹿灯籠踊」
    下、阿波「阿波踊」
「勧進帳」は大人が立三味線ともう一人入っていたようだが、それ以外はずらりと歌舞伎座本舞台の山台に子供達が並ぶ。自分の席が前の方だったこともあり、彼らの緊張感が伝わってくるよう。内容も玄人はだしというよりは初々しさは残るものだったが、とてもきちんとした演奏だったと思う。

「山鹿灯籠踊」は、熊本・山鹿市の夏祭りに伝わる、浴衣姿の頭上に灯籠を載せてゆったりと踊る。暗転の中に灯籠が浮かび上がり、現地での風情を伝えるような幻想的雰囲気。これを名題下の歌舞伎役者と新派の女優達が勤める。

最後はがらりと派手な雰囲気となっての「阿波踊り」。一番年嵩の彌十郎以下、澤瀉屋の面々も目立つ中堅・若手の顔ぶれで、猿弥などもはじけて踊っていた。特に目立っていたのは子供連の楽しそうな動きで、特に一番小さい千之助の可愛らしさがとても微笑ましかった。

  企画構成:中村翫雀・大谷友右衛門・市川染五郎・尾上松緑
2.木挽森賑売座留 [模擬店]
模擬店の時間は1時間。阿波踊りが終わると同時に、多くのお客さんが一斉にダッシュして、ご贔屓のやっているお目当ての模擬店へ向かっていく。初体験の私は京屋贔屓である友人に連れられ、まずは友右衛門・亀三郎・廣太郎・廣松の福引きへ直行。それでも既に行列ができていて、やっている側も要領が良い訳ではないのでなかなか進まない。ようやく順番が廻ってきて当たったのは化粧品セットだったので、迷わず友人に進呈。
(写真はこの後も沢山撮ったが、ここでは肖像権の問題がなさそうなこの1枚だけ掲載)

続いてテキ屋の兄ちゃんのような松緑のやっているドリンクコーナー(1階西側食事予約所)で、シャンパンを購入後2階、3階へと転戦。友人は歌江の「幕間シアター」へと入場したが、私は更にうろついてみることにする。

1階東側のドリンクコーナーは、おっとりと落ち着いた雰囲気の秀太郎・愛之助の担当。こちらでももう一度シャンパンを買ったところで、大阪から遠征の友人達にばったり。その後もロビーで度々色々な友人・知人とすれ違う。

地下食堂では團十郎・海老蔵のにぎり寿司が一番ごったがえしていたが、時蔵・梅枝のところで焼そばを買って食べて少し落ち着く。暑くて喉が渇いたので、宗之助・松也のドリンクコーナーでビールを買って、もう少し見て回ろうと思ったところで、そろそろ時間切れに。

3.表彰式
   日本俳優協会再建設立五十周年記念功労者表彰
昼の部では、脇役・ベテランの役者が対象の日本俳優協会賞の表彰だったようだが、夜の部は五十周年記念永年功労者表彰式。鈴木治彦の司会で、床山の三浦さん、三国さん、市川さん、附打の芝田さん、そして狂言作者の竹柴正二さんが表彰対象。いずれも口数は少ないが職人らしい雰囲気が強く伝わってくる。

中村雀右衛門会長の挨拶の後、表彰状と副賞10万円の授与。松竹の我孫子専務による祝辞も、同じ芝居の世界に生きる先輩への敬意が感じられた。また、殆どの表彰者が後進の指導について触れていたのも印象的だった。仕事の厳しさ、難しさに比して経済的な見返りが必ずしも十分ではないかもしれない世界だが、ここが欠けては歌舞伎の存続もあり得ないので、頑張っていただきたいものだと願わずにはいられなかった。締め括りは澤村田之助理事の挨拶。

  作・演出:尾上菊五郎 振付:初代尾上辰之助(三代目松緑) 美術:市川團十郎
4.「白雪姫」 長唄連中 竹本連中 箏曲連中
俳優祭で演じられるのは32年前の初演以来4回目ということで、もはや古典?となりつつある演目。主役の白雪姫は、昭和58年の2回目までが六代目歌右衛門、前回の平成9年の才には雀右衛門だったが、今回は玉三郎が勤める。これを見ても、歌舞伎界を代表する立女形の系譜ということで、それに相応しい大役ということになるか。

その役を、玉三郎は型どおりの赤姫で、冒頭から自分で箏を弾くなど大真面目に勤める。どこで崩すかと思って見ていたが、七人の童とラインダンスをするところ以外はきっちりとした女形芸。笑いを取るのは他の人に任せて自分は芯になる立場、ということなのだろう。これに葵太夫、東太夫の竹本が絡んで、立派な義太夫狂言という風情。

一方、團十郎は前回に引き続いての后実は魔女で、前回は菊五郎だった鏡の精は今回は海老蔵。こちらは十分にウケを意識した動きで自在。二度目の登場では、ぶっかえりから箒に跨って六方で引っ込むなど大サービス。

森の動物は、クマ(橋之助)、シカ(染五郎)、タヌキ(松緑)、ウサギ(菊之助)、リス(勘太郎)、サル(右近)、キツネ(愛之助)、イノシシ(獅童)。サングラス姿の松緑などはいかにもだが、染五郎のシカなどはミュージカル「キャッツ」かと思うほどきちんとしたメイク。

七人の童は、かつては動物を勤めていて今は協会理事となっている吉右衛門、仁左衛門、梅玉、左團次、段四郎、秀太郎、久里子という顔ぶれ。既に孫もいるような幹部連が真面目に子供の芝居をやるところが微笑ましく笑えてくる。

終盤は、まず青いハンカチを持った王子の幸四郎が登場し、毒リンゴを食べて倒れた姫を助けようとするが、そこにいよいよ登場するのが菊五郎の北千住観音で、舞台中央から台に乗って正面に押し出してくる。観音様と言うより、爪を伸ばしたタイ舞踊のような扮装で、台の後ろに従えた黒子が手を動かすところが、正面から見ると千手観音に見えるという趣向だが、せりふは「次は、南千住〜」。客席も大爆笑で、大いに盛り上がる。

締め括りには、芝翫、富十郎、元気な姿の又五郎、三津五郎、勘三郎が舞台に登場。芝翫の挨拶の後、富十郎の一本締めでお開きとなった。

こうして、言わば歌舞伎の「ファン感謝デー」である俳優祭を十分に堪能することができた。平日に仕事を休んでまで来るかというと難しいところだが、来年以降もチャンスがあればまた来てみたいものだと思った。


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mami

わぁ、行かれたんですね。うらやましいです。
一度見てみたいと思いながら機会もなく。
売店も楽しそうですね。播磨屋さんはなかったのかしら。
「白雪姫」は、想像するだけでも爆笑できそうです。
團十郎のお后に幹部連の”童”、菊五郎の千手観音なんて、すごすぎます。
テレビ放送があるという噂なので、楽しみにしています。
by mami (2007-05-27 13:05) 

ShyBoar

はい、私も念願叶っての初体験でした。
模擬店も、時間帯の前半に人気役者さんのお店に行くのはかなり大変ですが、そうでないところはそれなりという感じでした。歌江さんの「幕間シアター」は、やっぱり行った方が良かったかも。播磨屋さんは、今回はお店には出ておられなかったようです。
NHKのTVカメラは入っていましたので、放映を楽しみにお待ちください。
by ShyBoar (2007-05-27 22:35) 

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