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「朧の森に棲む鬼」 [観劇(その他)]

INOUE KABUKI SHOCHIKU MIX
「朧の森に棲む鬼」 Lord of the Lies
新橋演舞場 2007年1月6日(土)17時30分開演 1階6列41番

劇団☆新感線は2003年新橋演舞場での「阿修羅城の瞳」再演が初めての出会い。その後、2004年日生劇場での「髑髏城の七人」(アオドクロ)を観て以来、ほぼ2年半ぶり3度目。最初は、あくまでも染五郎とのコラボということと、「阿修羅城の瞳」再演時の天海祐希が観たかったこと、更に馴染みの演舞場ということで敷居が低かったというのがきっかけ。
そういう意味では、昔からの新感線ファンとはむしろ逆ルートだろうし、最近の「吉原御免状」「SHIROH」「メタルマクベス」なども見逃しており、そもそも「新感"染"」しか観ていないので、決して熱心なファンというわけではない。ただ、エンターテインメントとしてはまずまず楽しませて貰えるという期待感はあり、また馴染みの演舞場の正月公演ということもあって、今回も足を運ぶことにした次第。

正月の演舞場なのに場内に入るとヘヴィメタルの大きな音に迎えられるのは「いのうえ歌舞伎」らしく、ワクワク感と言うよりはむしろ「たまにはロックも良いなあ」という懐かしさ(?)を感じたりする。

「リチャード3世」「マクベス」などを下敷きに、どんな嘘も仕立てる舌先と弟分・キンタ(阿部サダヲ)の腕っ節を利用してのし上がろうとする男・ライ(染五郎)が、森の魔物・オボロとの契約で自分の命と引き替えに、舌先と同じく動く剣を手に入れ、エイアン国の王になる望みに向かっていくという物語で、ライは最後まで悪役としてのし上がり、そして滅びていく。

全体を通しての感想は、やはり染五郎の魅力とアクション(殺陣)を中心とした舞台となっており、その力でやや強引に最後まで押し切ったという印象。いやもちろん全体として楽しませて貰えたし、特に第二部で裏切りを重ねる場面や大詰での本水での動きなど、骨太な集中力に引き込まれる。台詞のやりとりもあまり気恥ずかしさを感じずに物語の世界を味わい、小ネタ満載の笑いも満喫することもできた。ただ、どうしてもここでの染五郎に対しては、歌舞伎という素養をベースにどこまでの働きができるか頑張って欲しい、と思いながら少し冷静に見てしまうので、染贔屓の方々の見方とは少し違うかもしれない。

他の役者については、まず誰が見ても思うとおり、阿部サダヲが儲け役でかなり美味しいところを持って行っていたし、染五郎と並んで身体能力の高さも見せる。特に、後半の特殊な殺陣(ネタバレ感もあるので伏せるが)も格好良かった。ちろん、古田新太(マダレ)も結構細かい芝居をしながらさすがの存在感で、歌舞伎で言う戻りの演技はちょっとゾクッとさせてもらった。ただ、男の見物からするとキンタと共に自己投影できる数少ない役なので、もう少し前に出た演技でも良いかもしれないと思った。田山涼成(オオキミ)は、本人がプログラムのインタビューで「夢の遊民社時代の血が騒ぐ」言っているように違和感なく役どころを押さえ、普段テレビで見るのとは違う味わいを見せてくれる。

また、座付きトップ女優である高田聖子(シキブ)もほぼ期待どおりの達者なところを見せる。だが、女優について更に言えば、今回は少々物足りないというのが正直なところ。秋山菜津子(ツナ)は幅のある演技を見せかなりの熱演ではあるし、真木よう子(シュテン)もやや一本調子ながら切れを垣間見せる場面もある。ただ、この3つの役が少しずつキャラクターがかぶっている(前二者は恋に生きる女、後者は女戦士)というのも少し辛い面があるかも。「阿修羅〜」再演時の天海祐希、夏木マリといった強烈な存在感を求めてしまうのは反則かもしれないし、客演で誰が良いかとなると難しいのだろうが、やはり男の見物としては女優でドキドキさせて貰いたいと思うのはやむを得ないところ。

他に気になったところでは、最初の部分でのオボロ達の唄にややバラツキが感じられたことくらいか。プレビューや初日のレポで指摘されていた音響のトラブルは、この日はあまり感じられなかったので、PAサイドの技術的な修正はかなり進んだのかもしれない。

食事は2階のkabesu-chayaで軽く食べようと思って予約所を覗くと「おぼろ月見ソーメン五郎」(1000円)というのがあったので、トライしてみる。品名は朧と染五郎に引っかけた駄洒落らしいが、エビ天と月見入りにゅうめんで暖かいし腹持ちも良く結構狙い目かも。

プログラムは、出演者紹介に加え、いのうえひでのり、中島かずき、染五郎のインタビューが興味深く充実しているが、特製カレンダーとセットで綺麗な紙の手提げ袋に入って3000円というのは、少々悩ましい。私としては、2000円でも良いので抱き合わせでなくプログラムだけで売ってほしかった。

終演後は、浅草第二部観劇後に既に少々出来上がった観劇仲間と銀座で21時30過ぎに合流。遅くまでやっている店を探して、以前からお気に入りの沖縄料理店「竹富島」へ。いつもの顔ぶれ、久々の東京観劇というメンバー、更に初対面の方も交え、久米仙のシークヮーサー割りなど飲みながら、2時間ほど盛り上がってお開きに。


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愛染かつら

こんにちは。
おおっ、ShyBoarさんも「朧月見ソーメン五郎」を食べたのですねー。
私も昨日行った時に食べました~。
演舞場の温かいお蕎麦はあまり好きではないのですが(味が薄すぎる)、これは美味しかったです。
皆さんに不評のカレンダー…
私は既に飾ってあります(笑)
by 愛染かつら (2007-01-09 15:06) 

ShyBoar

コメント&TBありがとうございます。
「朧月見ソーメン五郎」は、「末尾の『五郎』は何?曽我物とは関係ないし」などと、最初は一瞬ピンと来なかったのですが、少し間をおいてから納得しました。演舞場の温かいお蕎麦はあまり食べた記憶はないのですが、たしかにこれはなかなか良いバランスの味わいでした。
カレンダーは、持って帰るまでが何となく邪魔くさかった感じはありましたが、私もとりあえず飾ってみました。
by ShyBoar (2007-01-09 23:22) 

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