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初春歌舞伎公演「梅初春五十三驛」(初日) [観劇(伝統芸能)]

1月歌舞伎公演 通し狂言「梅初春五十三驛」(うめのはるごじゅうさんつぎ)
国立劇場 12時開演 2階3列44番

歌舞伎座の予約は毎月決まった日なので間違えないのだが、あぜくら会の先行予約日はこれまでにも勘違いすることが何回かあった。今回もちょっと出遅れたら初日の一階席は全く残っておらず、ようやく確保したのがこの席。でも、これでも初日の鏡開きは味わえるのでとりあえず満足。(振る舞い酒ばかり狙っていると思われそうだが、そういう面がないわけではないので・・・)。この日も11時過ぎに到着したらロビーに長蛇の列だったが、思った以上にすいすいと進み、枡酒を頂戴することができた。

さて今年の初春公演も昨年と同じく復活狂言、それも往事の上演台本を頼りに166年振りの復活というのだから、実質的には新作に近いものに菊五郎劇団が取り組む舞台。

序 幕 【京 都】 大内紫宸殿の場
    【大 津】 三井寺の場
二幕目 【池鯉鮒】 街道立場茶屋の場
    【岡 崎】 八ツ橋村無量寺の場
三幕目 【白須賀】 吉祥院本堂の場
          同 奥座敷の場
    【新 居】 関所の場
四幕目 【由 比】 入早山の場
    【吉 原】 富士ヶ根屋の場
大 詰 【大 磯】 三浦屋寮の場
    【品 川】 鈴ヶ森の場
          御殿山の場
    【江 戸】 日本橋の場

怪盗鼠小僧実は木曽義仲の遺児・清水冠者義高が頼豪阿闍梨の霊により鼠の妖術を得て幕府転覆を目論むところに三種の神器のうち天叢雲剣、八咫鏡の詮議が絡むという話を、京都から江戸日本橋まで道中双六よろしく五十三次の各宿場を舞台にしながら展開する、というのが一応は軸になっている。
ただ、そこに白井権八、櫓のお七などそれだけで物語の世界を持った人物が登場し、「岡崎の猫」などの外連の見せ場もありつつ、更にあちらこちらにパロディ満載という芝居になっている。だから、ストーリーの辻褄を考えたり、人物造形や心理描写がどうした、といったものとは対局にあり、またそれがいかにも歌舞伎らしくて、弁当や酒を楽しみながら通し狂言を一日ゆるゆる観るような「鷹揚の御見物」に相応しい。煮詰め方が甘い場もあるが、それもご愛嬌といったところだろう。別の言い方をすれば、庶民的な料理を色々とアレンジして五段重ねの重箱にぎっしり詰め込んだお節料理のようだと思った。

(以下ネタバレあり)
その中でも目立つ幕としては、まず「【岡崎】八ツ橋村無量寺の場」が面白い。菊五郎はまず先月の出刃打ちお玉を少しアレンジしたような婆に十二単という不思議な姿で現れその後化け猫になるが、正直なところ全く恐くない。それでも、その前の仔猫たちの可愛い踊りなども含めて、エンタテインメントとしては十分に楽しませて貰える。

さらに楽しいのはその次の幕である「【白須賀】吉祥院本堂の場」。本来の八百屋お七の舞台である吉祥院が浜名湖にほど近い白須賀宿に設定され、そこで悪玉の和尚や所化を中心に村人を集めて勧進芝居をするのだが、演し物が「車引」「五段目(山崎街道)」ということで、猪は闇雲に出てくる、時平公のはずが亡者が登場する、赤鳥居を勝手に近所の神社から持ってきて神主が怒鳴り込んでくる、旅役者の三宅坂菊之助(菊之助)と三宅坂小梅(松也)は当世風のギャグをかます、とまあもう無茶苦茶なことになる。これだけ沢山詰め込んでいるので、すべってしまう場面もないわけではないが、全体として歌舞伎好きには突っ込みどころも満載で大満足。
また特筆すべきは、この中で義太夫を語るのが三津五郎の所化弁長だが、全体の面白さを損なわない範囲でとても達者な語りを聞かせてくれ、何をやっても上手な人だと改めて感心する。

他に印象的な場面としては、大詰の「【品川】御殿山の場」では、夜桜の中で菊之助の白井権八が立ち回りをするが、国立劇場の舞台の奥行きを生かした装置と演出がとても美しい。これ以外にも、舞台美術の美しさを感じることが度々あった。


終演後は、仲間4人と赤坂見附まで歩き、営業している店もまだ少ない中で昨年と同じ「りらく座」という店へ。「つぼ八」の経営というのは後で知ったが、使いやすい創作和食のお店という感じで、何と言ってもこの正月3日に都心で開いているだけで有り難い。相も変わらずこの日のメンバーならではの危うさ厳しさ(もちろん愛情も)一杯のトークを展開しつつ、結局4時間以上も長居してしまった。


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愛染かつら

こちらにもお邪魔します~。
国立の初日、私も行きたかったのですが「あぜくら会」には入っていないので買えませんでした~。(T_T)

とっても楽しい演目でしたね。
ShyBoarさんのお節料理の喩え、言いえて妙だと思いました!
by 愛染かつら (2007-01-09 15:10) 

ShyBoar

こちらもコメント&TB恐れ入ります。
菊五郎劇団の厚みのある実力とアンサンブルをベースに娯楽色の強い芝居を作る、というのはある意味贅沢ですよね。これからも楽しい舞台を見せて貰いたいものです。
by ShyBoar (2007-01-09 23:29) 

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