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壽初春大歌舞伎(昼の部) [観劇(伝統芸能)]

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歌舞伎座さよなら公演 壽初春大歌舞伎(昼の部)
歌舞伎座 2009年1月25日(日)11時開演 1階17列17番

この日は、アメリカ在住10年以上になる学生時代以来の友人と同行。日米の生活を通じ政治・経済・文化と幅広い分野に造詣が深いのだが、歌舞伎はあまり観ていないものの興味はあるとのことで、仕事で一時帰国している時期に合わせて誘ってみたという次第。

1.春祝式三番叟 竹本連中
演舞場と並んで三番叟物から始まるが、こちらはもう少し儀式性が強い感じ。同行の友人に演目の由来などつらつら説明したが「まあ、縁起物ということね」と簡潔的確にまとめられてしまった。

幕が上がると松羽目の舞台で、まずは先触れの後見として錦之助と松江が登場し客席に一礼。続いて翁が千歳と三番叟を伴って現れる。翁は傘寿の富十郎で、膝の不安を微かに感じないでもないが、何といっても堂々とした姿に落ち着きがあるし「とうとうたらり・・・」の声にも張りがある。千歳は菊之助と松緑で、特に目立つところはないものの神妙に勤めているという様子。翁が退出すると背景が松から鶴へと変わり、梅玉が勤める三番叟が動き始める。こちらも特に派手な動きも見せず行儀良くきちんきちんと舞い進んでいくが、むしろそれが観ていて心地良いという印象。



  近松門左衛門 作
2.平家女護島 俊寛 一幕
幸四郎の俊寛はこれまでも観ているが、残念ながらしっくりきた憶えがない。実も蓋もないがむしろ他の役者達がどうかに関心があったというのが正直なところ。

今回も、冒頭から成経と千鳥の婚礼で一指し舞う辺りまではまあそれほどでもないが、船が到着して以降は、悲しみ、驚き、落胆、葛藤といった激しい感情の起伏を現すべき場面場面で、あえて喉を絞ってに弱々しさを強調したような口跡への違和感もあり、なかなか素直に感情移入しにくい。瀬尾そして清盛への憎しみ、妻東屋への追慕、千鳥への慈愛、そして「思い切っても凡夫心」以降の幕切れと、いくつもあるポイントのどこを軸として組み立てているのかも伝わって来にくい。初見だった同行の友人も「何か、考え過ぎという感じかな」という印象を口にしていた。

瀬尾はこのところ段四郎の安定した芝居を多く見てきたが、今回は彦三郎。多少癖のある口跡もまあ許容範囲で、憎らしさはもう一段強い方が良いとは思うが、極めどころの芝居は結構骨太な安定感があった。康頼は初役という歌六は強い存在感を示すまでには至らないものの、不足はない。

成経は三度目となる染五郎で、せりふも動きもかなりしっくりと身についた感じで、なかなか良い感じ。丹左衛門も数多く勤めている梅玉で、一層の安定感と颯爽とした佇まいを見せて十分。同じく何度も勤めている芝雀の千鳥も、一旦取り残されてのクドキに情のこもった味わいが感じられたのが嬉しい。



  河竹黙阿弥 作
3. 十六夜清心 一幕
物語としては発端となる箇所だけの上演でもあり、また清元に乗せて心中の場面を描く場面に漂う独特の風情と役者自体の魅力を味わう演目だけに、初見の友人にはどうかと思ったが、それなりに楽しんでもらえたようで一安心。

何度も手掛けている菊五郎の清心、また二度目というのがちょっと意外な時蔵の十六夜ともに、役の若さを見せることも含め手に入った安定感がある。場が変わって俳諧師白蓮は吉右衛門で、こちらは懐の深い役どころに良く合った口跡で味わいを見せる。付き合う船頭の歌昇は初役だが、吉右衛門との間合いにも無理がなく、良い意味で器用にこなす。求女の梅枝も、こうした水準の役者達の中で臆せずきちんとした芝居で十分。



4.鷺娘 長唄囃子連中
今回友人を誘う際に、夜の部は残念ながらスケジュールが合わなかったのだが、昼の部でもこれを観てもらえばとりあえずは損はないだろう、と思っていた。私自身、最近記憶しているだけで2005年の歌舞伎座本興行、2007年の特別舞踊公演についで3回目になるが、今回も極めてレベルの高い舞台となっていたと思うし、客席にジワが来るという感覚を友人にも味わってもらえたのは良かった。また、杵屋勝国以下の三味線と囃子方がこちらも高い水準の演奏を聞かせてくれて、このことにも友人ともども強い印象を受けた。

今回一つ感心したのは、早変わりで引き抜く直前の乱れが殆ど見られないこと。最初の白から赤へ変わる時は、身体の前で両袖をきっちりと重ねることで変わる真際まで白い姿を保ち、その後も傘の陰に上手く隠れることで、引き抜いて出た後との変化を鮮やかなものにしているのは、やはり玉三郎ならではの美学の一端ということだろうか。



終演後、友人からは「こんなに水準の高いものをいつも観られるというのは、本当に贅沢なこと。(魅力的な)『悪所』だよなあ。」とのコメントで、楽しんでもらえただけでなく、まあすっかりお見通しという感じだった。


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