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12月歌舞伎公演「堀部彌兵衛」「清水一角」「松浦の太鼓」 [観劇(伝統芸能)]

12月歌舞伎公演「堀部彌兵衛」「清水一角」「松浦の太鼓」
国立劇場
2007年12月16日(日)12時開演 1階14列33番

昨年の「元禄忠臣蔵」3ヶ月通し上演という企画が好評だったことに味を占めたのか、今年は「それぞれの忠臣蔵」という趣向で三つの狂言が並ぶ。

  宇野信夫=作 松貫四=監修
1.堀部彌兵衛 四幕
序幕で「高田馬場の仇討」での中山安兵衛と堀部彌兵衛の出会い、二幕、三幕で安兵衛を養子に迎えるまでの様子をじっくりと展開し、四幕目で15年後となり討ち入り前の家族の姿を描く。初代吉右衛門に当てて宇野信夫が書いたもので、当代も始めて取り組むとのこと。

その吉右衛門は、当初60才過ぎという設定の場面ではやや老け方が中途半端な感じもあるが、養子に迎えたいという想いを愚直に貫く姿を微笑ましく見せ、終幕では76才という設定でこちらはしっかりと老けた演技で「老いの一徹」を無理なく演じて、いずれも充実。役の上で吉右衛門の妻役は初めてという吉之丞も、三幕までは逆にやや老けて見え終幕の方が無理がないものの、控えめながら細やかに情感を感じさせる芝居となっていた。

歌昇の安兵衛も、作品全体の雰囲気に沿った形できちんとした人物設定で丁寧な芝居。また、二幕、三幕で彌兵衛と安兵衛を取り持つ住持丈念を演じる由次郎が、飄々とした味わいでもたつきも感じさせず思いの外良い出来だったと思う。終幕で娘さちを演じた隼人は、やや堅い雰囲気が目立ってしまったのはちょっと残念。

  河竹黙阿弥=作
1.清水一角 一幕二場
吉良方の侍・清水一角を主人公とした珍しい作品で、上演も昭和36年以来とのこと。

一角は、前半から中盤までの酔態(と言うか、アル中に近い)を見せるところは、あまりリアルにぐずぐずでも芝居にならず、かといって通り一遍では感じが出ないので難しいのかもしれないい。染五郎はややさっぱりし過ぎだったかもしれないが、無理を感じるほどではないし、終盤の動きなどはきびきびしてすっきり見せる。

対する上杉家から出向の武芸指南役・牧山丈左衛門を歌六が演じるが、こちらは程良い重さ、酔った一角に絡まれた時の苛立ち、幕切れでの潔さなどもきっちりと演じていた。

芝雀の一角姉・お巻、種太郎の弟・与一郎が、それぞれに一角のことを心配しながら見守る姿は、兄弟の情を感じさせて微笑ましい。

ただ、全体としてそれほどコクのある芝居とは今一つ感じられず、ぜひ再演して欲しいとまで思えなかったのは、役者というよりは作品そのものの問題ということだろう。

3.秀山十種の内 松浦の太鼓 二幕三場
三本目にしてようやくお馴染みの演目。最近は勘三郎なども演じているが、やはりこれは吉右衛門で観たいと思っていた作品で、久々にそれが叶ったことになる。

内容的には他愛ないと言われることもある本作だが、吉右衛門の芝居はそうした点を感じさせない。何より、俳諧を嗜む一方で、討ち入りをしない赤穂浪士とその身内である腰元に腹を立てて不機嫌になったり、名前も聞きたくないと言った大高源吾のことがやはり気になって其角を呼び止めてみたりと、悪くすると我が侭とも取れる松江侯を、むしろマイペースだが憎めない愛すべき殿様として、本当に無理なく自然に見せてくれる。山鹿流の陣太鼓が聞こえてきて指折り数える場面や、終幕の門前で馬に乗って家来に止められる場面など、いずれも良い意味での鷹揚さと稚気を過不足亡く表現していたように思う。それにしてもこの芝居を観るにつけ、家来としてついていくのは現実にはやはり大変だろうと、同じ勤め人の身としてはついつい同情してしまう。

染五郎は、序幕ではもう少し陰翳のようなものを感じさせてもよいか。ただ、終幕での討ち入り後の報告に関しては、むしろ颯爽とした雰囲気もあってまずまず。

宝井其角は歌六が初役で勤めるが、序幕で源吾に見せる情、二幕第一場で松浦侯を立てつつ上手にあしらうところなど、力みもなくまっすぐな芝居でなかなか。


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コメント 2

mami

ShyBoarさん、こんにちは。
播磨屋の松浦候は、稚気あふれる中にも品を失わず、というところがさすがで、気持ちよく拝見させてもらいました。

今年も一年楽しく読ませていただきました。TB,コメントも頂き有難うございました。
来年もよろしくお付き合いお願いいたします。
by mami (2007-12-31 16:11) 

ShyBoar

mamiさん、こんにちは。

翌週は南座に参りましたが、東京での観劇納めは私も播磨屋の松浦侯で、本当に気持良く拝見することができました。

こちらこそ今年一年、色々とありがとうございました。来年もどうぞよろしく。
by ShyBoar (2007-12-31 16:23) 

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