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十二月大歌舞伎(初日・昼の部) [観劇(伝統芸能)]

十二月大歌舞伎(夜の部)
歌舞伎座
2007年12月2日(土)11時開演 1階16列19番

今月は観劇予定ばかりでなく他の所用も多いため、普段はあまり積極的には選択しない初日に足を運ぶことに。

1.鎌倉三代記 絹川村閑居の場 一幕
「三姫」の一つという大役の時姫を、12年振り2回目の福助が勤める舞台。また、三津五郎初役の佐々木高綱を、八代目三津五郎以来51年振りの「芝翫型」と言われる姿で勤めるのも話題。通常は井戸から再度登場してから引き抜いてぶっかえると紺色の緞子に金銀の六文銭の柄の衣裳とざんばらの鬘になるところを、赤の襦袢に六文銭の柄の衣裳と白と紫の仁王襷に菱皮の鬘という姿で井戸から現れる、とのこと。

幕が開くと花道から橋之助の三浦之助が登場。よろけながら本舞台へ向かうが、何かふわふわして今一つ手負いらしい雰囲気が薄い。その後も何やら勿体つけたような芝居で、役本来の凛々しさがあまり感じられないのが残念。

福助の時姫は、姉さん被りで出てきたときはまずまずの風情だと思ったが、その後の芝居が何とも言えず焦点が定まらないという様子。平成16年1月歌舞伎座での雀右衛門の姿などを思い起こして比べること自体どうかとも思うが、それにしても何とも薄味に感じられて仕方がない。見所となるべき父を討とうと思い切る場面よりも、それまでに迷う姿が優柔不断に見えてしまい、大役という感じがしないのだ。日を重ねて味わいが深まっていってくれれば良いのだが。

三津五郎は、古い型の復活自体は思ったほどの違和感は感じられず。むしろ、それまでの今一つ引き締まらない舞台が、高綱の登場で芝居がようやく本来のスケールまで大きくなってほっとしたといった感じであった。

昼食は久しぶりにベトナム料理の「cho Vietnam」へ。生春巻き・ミニ豚そぼろご飯・ミニフォーのセットで1000円は、結構お値打ち。




2.信濃路紅葉狩鬼揃 長唄囃子連中 竹本連中
新歌舞伎十八番の「紅葉狩」とは異なる新作。観世小次郎信光作の五番目能「紅葉狩」を題材に、長唄、竹本掛け合いの松羽目舞踊としたもので、能の小書である「鬼揃」を取り入れてツレである侍女たちも鬼になるところが特色とのこと。

幕が開くと紅葉を絡めた大きな松が中央に、脇に竹が描かれた舞台。正面の山台に長唄連中、その前に囃子方、さらに上手には竹本。

まずは花道から玉三郎の上臈に、門之助、上村吉弥、笑也、笑三郎、春猿が続く。この装束が、半切という短めの袴姿に紅葉も鮮やかな唐織の衣裳が華やか。初日ということもあってか全員の雰囲気がぴったり揃っているとまでは言えないものの、おっとりとした雰囲気で踊り進みながら思ったほど退屈はさせない。

続いてやはり花道から海老蔵の平維茂と従者の右近、猿弥、太刀持の弘太郎が現れる。海老蔵は台詞も少ないのが功を奏してか、顔と姿の美しさでこちらもまずまずの雰囲気。維茂が宴に加わってからは従者達はいなくなり、その後酒を呑んで寝入ってしまうところまで、特に破綻はない。

上臈と侍女達がその正体を現しつつ順次姿を消すと、アイとして勘太郎の山神が登場。さすがに踊りの切れが良く、後段に向けて躍動感が盛り上がる形になる。

後ジテでは玉三郎の鬼女だけが長袴で、それ以外は半切のまま。顔はいずれも鬼の拵えで、侍女達の鬼がそれほど長くないものの毛振りも見せつつ、最後は鬼女が中央の台で極まって幕となる。

見終わってみて感じたのは、元となった能自体は観たことはないものの、歌舞伎の「紅葉狩」とも流れは同じで松羽目舞踊の形にしたこと自体も違和感がなく、新作としてはまずまずまとまったものになったのではないか、ということ。更に細部も含めて練り上げられれば、意外と再演される機会は多くなっていくかもしれない。

  河竹黙阿弥 作
3.水天宮利生深川 筆屋幸兵衛 一幕二場
   浄瑠璃「風狂川辺の芽柳」
先代の当たり役だった「筆幸」の幸兵衛に、当代勘三郎が初役で挑む。

その勘三郎は、没落士族というにはいささか世話がかった雰囲気が強く、その点だけは昨年3月の幸四郎の方が不器用さがニンに合っていたとは思うが、芝居の運びや間はやはり今回の方がはるかに無理がない。狂ってからの芝居は、箒を手にして知盛の亡霊姿を見せるところでなまじ切れ良く踊ってしまったり、大家との絡みで滑稽味が強くなったりと、あざとくなりかねない危うさはありながらも、常軌を逸した目の様子など密度の高い演技でまとめていた。ただ、自然と凄みを感じるという域には、まだ達してはいなかったように思う。

眼病を患っている長女のお雪を鶴松が、妹お霜をこの日は原口智照(須田あす美とダブルキャスト)が勤めていたが、平板に流れずきちんとした芝居で、要所では胸に迫る場面もあった。

猿弥の金貸し金兵衛、彌十郎の代言人安蔵は、いずれも想定よりはしっかりと憎々しげな姿を見せ、幸兵衛の哀れさと良い対比を見せていた。差配人(大家)の与兵衛はこのところ老け役も多い市蔵で、老けきれない軽さは多少残るものの、芝居の流れにはよく収まっていた。身投げした幸兵衛親子を助ける車夫三五郎は橋之助で、こちらは特に過不足無し。歌舞伎座の舞台では久々に観る獅童は巡査役で登場するが役のつけ方としては無難で、こちらも特にぎこちなさも感じられず。

最後は、身投げから助けられた幸兵衛が正気に戻った後、着物や金子、更にはお雪の眼病に効く目薬を施してくれる人が現れたり、金兵衛と安蔵が系図買いで捕らえられた話が伝えられて、全て水天宮の御利益として目出度く幕となる。これまでの上演台本とは少しずつ異なるのだが、今回の方が原作に近い形とのことで、芝居として観ても特に違和感は感じられず、むしろこちらの方が無理がないようにも思えた。

終演後は、関西からの観劇仲間と予定外にばったり出会い、久しぶりに日本茶カフェの「鳴神」へ。釜煎り茶を三煎ほど飲みながら、12月から1月の観劇スケジュールなど30分ほど情報交換して店を出た。


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