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11月歌舞伎公演「摂州合邦辻」 [観劇(伝統芸能)]


11月歌舞伎公演「摂州合邦辻」
国立劇場
2007年11月10日(土)11時30分開演 1階5列22番

菅専助・若竹笛躬=作 山田庄一=補綴・演出
通し狂言 摂州合邦辻 四幕七場

歌舞伎では昭和43年国立劇場以来39年ぶりの通し上演とのこと。文楽では「万代池の段」は見ているが序幕と二幕目は当然初めてで、また吾妻歌舞伎以来の藤十郎の持ち役である玉手御前のある意味集大成が見られるかという期待も持ちつつ、大劇場へ。

序幕「住吉社前松原の場」は、発端での玉手と俊徳丸の姿や毒酒のくだりを見ることができたのが新鮮だったが、逆に言えばそれを超えて残るほどのものはあまり感じなかった。

二幕目は「高安館表書院の場」「同・奥御殿庭先の場」「河内国竜田越の場」と続くが、まず執権誉田主税之助妻・羽曳野の秀太郎が登場してくると、物語の濃い流れが動き出したことが感じられる。奥庭での玉手とのやりとりも緊迫感があった。愛之助の主税之助は、父と夫婦役というのは少し無理があるとはいえ、男らしい骨太さや凛々しさも十分感じさせてくれる好演。
彦三郎の高安左衛門は、役の設定もあるだろうがやや影が薄い。勅使高宮中将実は桟図書の秀調が、策略を巡らすにしては少し間の抜けた端敵役という感じでまずまず。進之介は声は大きいのだが少々考えが足りないという役作りが強調されていて、芝居の流れという意味では少し違和感あり。

三幕目「天王寺南門前の場」「同・万代池の場」では、何と言っても参詣の人々の中で閻魔堂建立の祭文を唱え金を集める合邦を演じる我當が、とても素朴で自然な雰囲気を作り出していて嬉しくなる。後半も俊徳丸、浅香姫、入平、次郎丸、そして合邦が登場して再会のドラマから立ち回りへと進み、それぞれきちんと勤めているのだが、文楽で感じた展開のスムーズな流れや盛り上がりを今一つ感じられなかったのは、少し残念。

大詰「合邦庵室の場」。閻魔の木像を乗せた車が入口脇に置かれているが、立てられた幟の赤い色が妙に目についてしまった。芝居の方は、百万遍供養のくだりは思ったよりあっさり。続いて合邦と妻・おとくのやりとりになる。吉弥もここまでの老け役は珍しいと思うが、少し線が細いのも田舎婆ではない品を感じさせ、娘と夫の間で見せる葛藤にも無理がなく、なかなかの好演。
いよいよ花道から頭巾に顔を包んだ玉手が登場。藤十郎は年相応に見えてしまうことが無いとは言わないが、むしろ俯いたり顔を上げたりする瞬間に恐ろしく若々しく艶やかな表情を見せることに圧倒され、かつ驚かされる。庵室に入ってからも、俊徳丸へのくどきに見せる一途さ、嫉妬から浅香姫を引きずり回すのし掛かるところの凄み、そして刺されて手負いになってから落ち入るまでの詰んだ台詞の展開と、一貫して濃密な芝居が緊張感を保って展開される。他の役者達もそれぞれ熱演なのだが、全ては主役である藤十郎の玉手に収斂するような舞台という印象で、いずれにしても十分に堪能することができた。


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