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銕仙会七月定期公演 [観劇(伝統芸能)]


銕仙会七月定期公演 18時開演
宝生能楽堂 脇正面 へ列8番

歌舞伎は本格的に観始めて16年、文楽もぼちぼち通うようになってようやく10年ほどになる。また、狂言についても何度か自分でチケットを買って足を運んでいるが、能に関してはこれまでチケットを頂いたり、他のジャンルの演目を観る機会に合わせてたまたま観たりということで、自分から出かけたことは殆どないと言ってよい。基本的に抽象度が高いことに加え、演目の内容・背景に関する理解がないと観ていても難しい印象が強く、他の伝統芸能と比べるとかなり敷居が高いというのが正直なところだった。

ところが今回は、たまたま文楽の関係で知り合いになったAさんからお誘いを受け、演目の解説資料なども送っていただくなど至れり尽くせりの状況だったので、良い機会だとも思い期待感を持って当日を迎えた。

少し早めに会社を出るつもりだったのだが、直接自分の会社ではないがグループ会社でのトラブルがあり、そのとばっちりを受ける形で少しバタバタしてしたため、慌しく会場の宝生能楽堂へ到着。
この会場自体も初めてだが、落ち着いたロビーから会場に入ると、当然ながら立派な能舞台が目に入る。席は脇正面の中央で、橋掛も近くて観易い。

1.能「頼政」
 前シテ  尉      野村四郎
 後シテ  源三位頼政  野村四郎
 ワキ   旅僧     宝生欣哉
 アイ   里人     竹山悠樹
 笛           藤田次郎
 小鼓          幸 正昭
 大鼓          垣原崇志
 後見          鶴澤郁雄、浅見真州
 地謡          野村昌司、泉雅一郎、小早川修、西村高夫
             北浪昭雄、浅井文義、大槻文蔵、阿部信之
「平家物語」を素材にした世阿弥作の名作の一つとのこと。旅僧が宇治の里で出会った老人に平等院へ案内され、僧が扇形に残された芝の謂れを問うと、老人は自分こそ源三位頼政の幽霊と名乗って消える。再度現れた頼政は、以仁王を奉じ蜂起してから宇治平等院に陣を構えたが頼みとする息子も討たれ自刃するまでを語り、扇の芝の草陰に姿を消す。
前シテはやや動きが少なく、不覚にも疲れが出て少しうつらうつらしてしまったが、後シテになってからは老武者の想いを込めた動きとして伝わってくるものは確かに感じられた。その中で、装束に描かれた波の模様が宇治川を挟んだ合戦の躍動感を表現しているようで、とても印象的だった。

2.狂言「井杭」
 シテ   算置     野村万作
 アド   何某     野村万之介
 小アド  井杭     野村裕基
何某にいつも頭を叩かれる井杭が、被ると姿が消える不思議な頭巾を手に入れる。いつもと違って急に姿を消した井杭を見つけるべく何某は算置(占い師)を呼び込んだが、透明人間になった井杭が二人の鼻を弾いたり耳を引っ張ったり、また算置の大事な算木を隠したりして二人を喧嘩させてしまう。
プログラムによれば、秀吉の井杭、前田利家の算置、家康の何某という顔合わせで初演されたとのことで、それを念頭に置きながら観るのも面白い。萬斎の息子である野村裕基は、最初少し咳き込んだりして心配したが、子供がやることで一種妖精のような存在になるこの役を、万作、万之介という正に祖父の世代を相手に、品良くかつ溌剌と勤めていたと思う。

3.能「安達原」
 前シテ  里女     山本順之
 後シテ  鬼女     山本順之
 ワキ   山伏祐慶   大日方寛
 ワキツレ 供山伏    御厨誠吾
 アイ   能力     高野和憲
 笛           寺井久八郎
 小鼓          古賀裕己
 大鼓          國川 純
 後見          永島忠侈、観世銕之丞
 地謡          谷本健吾、長山桂三、浅見慈一、馬野正基
             柴田稔、清水寛二、浅井文義、岡田麗史
この演目に関しては、歌舞伎でも「黒塚」を何度か観ているし、また昨年10月の三響会特別公演でも片山清司のシテで観たこともあって、馴染みがあるのは有り難かった。
まず印象的だったのはワキと地謡の声の力。シテは面があり、また鼓の音も大きいため思ったほど声は通らないようだったが、私の席からはまずまず聞き取ることはできた。そうした力のある声と囃子方の緊張感のある演奏とが重層的に響くことで、この演目は音楽劇なのだという感じを強く受けた。

それにしても、演劇や伝統芸能などは、どんなものでも実際の舞台を観る数が少ないとわからない部分が大きいと思うが、特に能についてはそれを強く感じてしまう。大衆性、エンタテインメント性が薄いものでもあるだけに、少しずつでも機会を重ねてその良さを味わえるようになれればと、今更ではあるが改めて感じた。


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