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寿初春大歌舞伎(夜の部) [観劇(伝統芸能)]

寿初春大歌舞伎(夜の部)
歌舞伎座
2007年1月21日(日)16時30分開演 1階17列18番

今日は昨年11月演舞場と同じく、会社の同僚2名を伴っての観劇。

1.廓三番叟 長唄囃子連中
一昨年10月歌舞伎座では傾城だった芝雀に加えて孝太郎が新造を勤め、傾城は雀右衛門。足の運びは僅かだが、華やかな舞台の中で新造二人を従えた貫禄だけでなく、手踊りの部分にドキッとするような色気を感じた。太鼓持ちの富十郎も控えめながら格の違いを見せる。

2.祇園祭礼信仰記 金閣寺 一幕
幸四郎の松永大膳、吉右衛門の此下東吉、玉三郎の雪姫、梅玉の狩野直信、左團次の佐藤正清と、当代ではまずまずの大顔合わせによる「金閣寺」。兄弟競演も、ようやくあまり意識せず普通に観られるようになってきた。

まず幸四郎の大膳は、何度も手掛けているだけに違和感は少ないが、一方で悪役としての大きさや怪異さといった部分が薄く、全体に芝居のメリハリが弱く感じられる。

一方で吉右衛門の東吉は、大膳との絡みを中心として最初は体を小さく見せ、後半に向けて徐々に大きさを感じさせるといったことも含め、一貫して味わいの濃い芝居を展開する。品の良い動きと見物へのアピールとが良いバランスで、この芝居の面白さを引っ張る活躍を見せてくれて嬉しい。

玉三郎の雪姫は以前にも観ているかと思っていたが、実は初見。前半囚われの身で大膳と絡む部分や直信との対面はくっきりと分かり易い芝居だが、濃密な色気という面では少し物足りない。ただ、桜に縛られてからの所謂「爪先鼠」以降の場面は、自らを美しく見せることに焦点を当てた身体の動きを中心に、やはり引き込まれる。

梅玉の直信は出番は少ないが、持ち前の上品さを出して過不足ない。左團次も動きのある芝居に無理がない。

3.新歌舞伎十八番の内 春興鏡獅子 長唄囃子連中
勘三郎となって初となるこの演目だが、高く評価する劇評がある一方で、動きにいつもの切れがないというブログ等での記事も目にしていた。ただ、少なくともこの日観た限りでは、私としてはしっかりとした充実感を味わうことができた。

ともすれば勢いに任せて一気に踊りきるといった雰囲気が強い勘三郎だが、前ジテでは丁寧さが目立ち、長唄の詞にも良く乗って次々と踊り進みながら、可憐さや柔らかみを保っているといった様子。獅子になってからも、毛振りは期待ほどの大きさは無いが、一つひとつの極まり方がくっきりとしているのが印象的。

胡蝶は宗生と鶴松。宗生は顔が母親にとても良く似て見える。鶴松は、踊りの経験値は御曹子達より少ないはずだが、それはあまり感じさせず、きちんと勤めていたように思う。

  河竹黙阿弥 作
4.処女翫浮名横櫛 切られお富 二幕
初演が元治元年(1864)の三代目田之助という紀伊国屋ゆかりの演目だが、丁度15年前の国立劇場で亡き九代目宗十郎の舞台を観ることができたのは、今となっては貴重な体験。記憶は微かではあるが「悪婆物」ならではの退廃と濃密さといったイメージが残っている。

今回は通常演じられる「薩捶峠一ツ家の場」の前段として「赤間妾宅の場」がつくが、やや説明的な感じ。むしろいきなり傷のある顔で与三郎と再会する方が、この芝居らしい陰翳が出るようにも思う。

役者の方は、歌六の赤間源左衛門、彌十郎の蝙蝠安ともまずまず達者で、橋之助の与三郎もあまり邪魔にはなっていない。それでも、これは何と言ってもお富の存在感次第という芝居。

その福助は、ニンには合っていると期待していたのだが、確かにそれが生きている面もあったものの、少々はしゃぎ過ぎというか、強請場でも結果的に笑いを取ってしまうことが多い分、ぞっとするような凄みや手強さが薄くなっていたのは残念。蝙蝠安を追って花道を引っ込むところも、殺してでも大事の金を取り返そうという雰囲気が弱く、最後の「畜生塚」の殺し場も思ったほど盛り上がりを感じなかった。

最後は芝居半ばの口上の形で締め括り、すっきりとした打ち出しにはなったが、物足りなさが残ったのは確か。

終演は21時25分と遅く日曜日の夜ということもあり、大人しく解散して真っ直ぐ帰宅。


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コメント 5

mami

ShyBoarさん、こんばんは。
TBありがとうございます。
「金閣寺」の玉三郎はちょっとこの世の物とは思えないような美しさでしたねえ。お芝居としては少し物足りない気もしましたが、「廓三番叟」「鏡獅子」と共に、夜の部は目の保養という点では満足できました。
福助のお富も確かにやりすぎのきらいはあったかもしれませんが、面白く観られました。
by mami (2007-01-28 00:23) 

ShyBoar

mamiさん、こちらにもコメント&TBありがとうございます。
玉三郎は他の舞台でもそうですが、歌舞伎という枠の中で独自の美を追究し描き出しているという面が強いと思います。ただ、義太夫狂言としての濃さとはまた別物かもしれませんね。
「切られお富」は福助ならではという舞台で楽しくは観られましたが、やはり宗十郎の少しこってりした大らかな古風さも懐かしいです。今はなかなか得難いものですが。
by ShyBoar (2007-01-28 07:38) 

twinkle

初めまして。 歌舞伎・囃子 と検索をかけていたらお邪魔させていただきました。
沢山歌舞伎 みられてるんですね。すごい。

私は3歳から 日本舞踊・お囃子・お三味線などずっとやってましたが、全く持って 物語の意味や内容を考えたことがありませんでした。。。
自分の今までをカタチにしようと また、身近なお囃子仲間のHPをつくろうと サイトの作成にとりかかりました。

勉強することだらけですが、、自分の好きな役者や演奏家が誰になるのかこれから楽しみです!
一番安い席で これから歌舞伎座と国立通います。
自分が舞台に立つのと観るのとでは違いますが、立ったからこその視点も大切にしたいです。

これからブログ訪問させてください(o^-^o)
by twinkle (2007-02-09 16:11) 

ShyBoar

twinkleさん、はじめまして。お越し頂きありがとうございます。
20代まではもっぱらRockやPopsといった洋楽ばかり聞いていましたが、30才頃から急に伝統芸能に目覚めてしまいました。今となっては、もっと時間のあった学生時代に沢山観ておけばよかったと思いますので、今まさに学生の方は羨ましいです。
また、twinkleさんのように子供の頃から色々なお稽古をされてきた方の厚みにはなかなかかないません。実際に踊られる方は、やはり舞踊に対する見方も違うでしょうから。
そんな私が勝手なことを書き散らかしておりますが、気が向かれたらまたいつでもお越しください。お待ちしています。お囃子のHPも、完成したら教えてくださいね。
by ShyBoar (2007-02-10 00:05) 

twinkle

早速コメントいただきありがとうございます。
いろいろとこれからご教授いただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします(^-^)
by twinkle (2007-02-11 12:35) 

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