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2月文楽公演(第一部) [観劇(伝統芸能)]

人形浄瑠璃文楽二月公演
竹本住大夫文化功労者顕彰記念

先日ご一緒させていただいた文楽太夫の方がご出演だということもあり、やはり出かけることにした。二部と三部は既に完売状態だが、第一部は幸いまだ少し席が残っていた。

<第一部> 14列12番  11:00開演

1.「御所桜堀川夜討」弁慶上使の段
 中:新大夫/清志郎
 切:十九大夫/富助
 卿の君:紋秀、妻・花の井:紋豊、腰元信夫:清三郎、
 母おわさ:紋寿、侍従太郎:玉輝、武蔵棒弁慶:玉女

母おわさは、まず「わさわさと」よくしゃべる裁縫師として登場し、次いで娘を想う母の姿、更に十八年前の一夜の契りを語り、最後に娘を失う愁嘆と、仕どころが多い。それだけに、歌舞伎の方では大きな役であると同時に、感情の動きを表現するのが難しい。
それに対して、今回義太夫で聴いた限りではもう少しさらっとした位置づけで、あくまでも弁慶の葛藤と悲しみが中心になっているように感じたのは、浄瑠璃本来の流れなのか、あるいは十九大夫の語りの味わいによるものなのか。玉女の遣う弁慶が、抑制の利いた凛とした姿だけに一層悲しみが深い好演だったことも、その印象を強めたかもしれない。
それにしても、義経の北の方・卿の君の身代わりに腰元信夫の首を差し出すことにした弁慶と乳人・侍従太郎夫婦、そしてそれに自ら同意する信夫の四人は、いずれも武家の論理に生きる人たちだが、おわさだけはかつて契った男への思慕と娘への愛情にひたすら突き動かされている。その対比が切ない。

2.「関取千両幟」猪名川内より相撲場の段
 おとわ:咲大夫、猪名川:松香大夫、鉄ヶ嶽:英大夫、
 北野屋:貴大夫、大阪屋:南都大夫、呼遣い:相子大夫
 /燕二郎、胡弓:龍聿
 猪名川:玉也、鉄ヶ嶽:文司、女房おとわ:文雀、大阪屋:勘市、
 呼遣い:蓑紫郎、北野屋:勘緑

六世鶴澤燕三を襲名することになった燕二郎が、場面転換で浅葱幕の降りている間、曲弾きを披露する。撥の柄や左手で弦を弾き、ブルースやロックのボトルネックギターのように撥をスライドさせ、胴裏を打楽器のように叩き、更には撥を駒に乗せて飛ばし左手で受け止めたかと思うと、三味線自体を逆さに立てたり頭上にかかげるなどなど、ケレン味に溢れた独奏をたっぷり聴かせてくれた。人形浄瑠璃が「芸術」である以前に「芸能」であることを思い起こさせてくれるようで、嬉しくなってしまう。文楽三味線はどうしても義太夫の陰に隠れがちだが、こうした演奏もどんどん聴かせてほしい。
義太夫では、まず咲大夫はしっとり。松香大夫は葛藤の苦しさは出ているが、もう少し主役らしい大きさがあればと思う。英大夫は、逆に敵役を堂々と伸びやかに語る。人形では、やはり文雀の過不足ない動きが印象的。


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コメント 2

mami

ShyBoarさん、TBありがとうございました。
こちらからも再度つけさせていただきます。
燕二郎さんの曲弾きは三味線のおもしろさを再認識させてくれましたね。
今月は文雀さんの出番が少なくて、文雀ファンとしては物足りませんでした。お年を考えれば、玉男さん同様、これからだんだん観る機会が減ってくるのかもしれません。寂しいです。
by mami (2006-02-21 14:53) 

ShyBoar

mamiさん、こちらこそ、コメント&TBありがとうございました。
三味線は、長唄の細棹、地唄の中棹、義太夫の太棹と、
それぞれの味わいがありますが、
文楽の太棹はしばらく聴かないと禁断症状が出ます。
文雀さんは、関西在住時代に阪神西宮駅で何回かお見かけしました。
その時は「この人が人間国宝だとわかっている人は少ないだろうなぁ」
などと思ったりした憶えがあります。
by ShyBoar (2006-02-22 23:50) 

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