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壽初春大歌舞伎(夜の部) [観劇(伝統芸能)]

壽初春大歌舞伎(夜の部)
歌舞伎座
2006年1月21日(土)16時45分開演 1階19列13番

東京も久しぶりの大雪の中、帰りの足のことを心配しながら歌舞伎座へ。一月下旬になってもロビーがまだお正月モードだが、これはこれで良いかも。
座席は8日昼の部の時と全く一緒。自分で選んだわけでなくチケットWeb松竹で自動的に決まったのに、ちょっと不思議。

1.玩辞楼十二曲の内「藤十郎の恋」二幕三場

菊池寛の小説を歌舞伎化し初代鴈治郎が大正八年に初演したもの。扇雀が演じる藤十郎(ややこしいな)は、和事役者の柔らかさとすっきりとした風情は出ており、まずまず。一方、時蔵のお梶は品があって綺麗だが、藤十郎に迫られて気持ちが傾き行灯を消す辺りは、もう少し決意を秘めた色気が欲しかった。
芝居茶屋と楽屋を舞台にした「バックステージもの」として、往事の様子を見せてくれるのは楽しい。

2.坂田藤十郎襲名披露「口上」一幕 朝倉摂 美術

座組次第で顔ぶれが決まるとは言え、歌舞伎座での披露で成田屋、音羽屋、中村屋ともに見あたらず、芝翫も病気休演で不在なのは少々寂しい。そんな中では、両端に座る播磨屋と高麗屋が気になる。また、扇雀長男の虎之介が良く通る声で挨拶をしていたのが印象に残った。朝倉摂による舞台美術は、同じような意匠を散らしているが襖の地色が南座より地味なので、かえって落ち着いた雰囲気。

今日は団体の予約が多いとのことで、珍しく食堂は3階も含めて全部満席でちょっとびっくり。雪がまだ残る外へ出て、すぐ近くの蕎麦屋「宮城野」へ行き、かき南蛮とお銚子一本で暖まる。



3.伽羅先代萩「御殿」「床下」一幕 中村虎之介初舞台

今月の襲名披露演目で、唯一南座と重ならないのがこれ。鴈治郎時代の平成13年4月に大阪松竹座で観ているが、その時は鴈治郎の政岡、田之助の八汐、秀太郎の栄御前、仁左衛門の仁木弾正、我當の男之助だった。
今回の「御殿」の演出は、全体に文楽の運びに拠っており舞台装置も異なるとのこと。東京の型と一々比べられるほど憶えているわけではないが、ところどころ違いには気がつく。
まず前半は、虎之介の千松が8才になったばかりの初舞台にしては、とてもきちんと芝居をしている。対する鶴千代も鶴松がしっかり演じており、子役同士の芝居に引き込まれるほど。藤十郎は「飯炊き」にはそれほど強く思い入れをすることなく、むしろ後半に向け抑えている感じ。
その後半は、やはり芝居の運びや立ち位置が東京の型と違うが、新鮮でありかつ特に無理は感じない。また、千松が毒饅頭を食べ八汐に殺されてからの動き方、更に栄御前との絡みから千松を抱いての嘆きと八汐の成敗まで、藤十郎は義太夫の語りと三味線を強く意識して芝居を進める。溜めた動きと詰めた台詞が濃厚な世界を作っているのがとても印象的。その他には、梅玉の八汐は敵役を丁寧に演じ、秀太郎の栄御前が位の高さを示す芝居。
最後の「床下」はお待ちかね、高麗屋と播磨屋の兄弟共演。花道と本舞台に分かれるが、小柄を投げるやり取りもある。まず吉右衛門の男之助は、讒言で床下に潜む鬱憤を晴らすような荒事の芝居が気持ち良い。幸四郎の仁木弾正も妖しさを漂わせて、なかなか。

4.上「島の千歳」長唄囃子連中
  下「関三奴」長唄囃子連中

「島の千歳」は、白拍子から娘姿に変わるご祝儀舞踊で、おおらかな浜辺の書き割りの前で福助がゆったり華やかに踊る。
「関三奴」は、これまで観た三津五郎の達者さと比べても仕方ないが、橋之助、染五郎とも毛槍を振って楽しく踊っていた。場所は日本橋という設定で、書き割りは中央に富士山、上手に江戸城、下手に蔵と呉服店だが、店は「越後屋」で暖簾は三井の紋が描かれており、松竹と三越が最近提携したことを思い出した。
ともあれ、前の演目がこってりだったので、さっぱりしたデザートという感じの長唄舞踊で打ち出したのは良かった。

終演後は雪は殆ど上がっており、足下は悪いが電車には影響なく、無事帰宅できた。


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Norihime

かき南蛮とお銚子一本、いいなぁ、おいしそう‥‥。
かき南蛮って食べたことがないのですが、お江戸ではポピュラーなのですか?
もしかして、関西にもある???私が知らないだけ???
by Norihime (2006-01-22 15:19) 

ShyBoar

かも南蛮の鴨の代わりに牡蠣が入っているお蕎麦です。
暖かいお蕎麦に、大ぶりの牡蠣4つと細く切った葱が沢山入っていました。
ポピュラーかどうかはよく知りませんが、季節のものというか、冬場の変わり蕎麦の一つですね。
一般的には関西の食文化の方が奥深いものが多いですが、
蕎麦に関してはお江戸に軍配が上がるのではないかと思います。
by ShyBoar (2006-01-22 22:32) 

愛染かつら

はじめまして。
同じ日に同じ部を拝見していたのですねー。
「宮城野」は以前から気になっていたのですが、未だ行ったことはないんです。
かき南蛮、美味しそう!
今度、行ってみようと思いました。
TBさせて頂きました。m(__)m
by 愛染かつら (2006-01-28 15:11) 

ShyBoar

愛染かつらさん、はじめまして。
nice!&コメントありがとうございました。
同じ日の観劇記というのは、ありそうで意外と少ないかもしれません。
舞台は生もので日々違いますから、二度の観劇は羨ましいです。

「宮城野」は、愛用の三階そば食堂が満席だったので雪の中を飛び出しました。
かき南蛮は、中サイズの牡蠣が4つほど入っていて、
そばつゆはやや甘めですが、ほっとするお味でした。

愛染かつらさんのブログは、以前にも「関連記事」で見つけて、ちょっと拝見させていただいたことがあります。またお邪魔させていただきます。
こちらの方も、今後ともどうぞよろしく。
by ShyBoar (2006-01-28 16:14) 

Ren

こんにちは~♪1月は結局歌舞伎座へは行かれませんでした。
せめて幕見でも、と思ったのですが、残念。
ShyBoarさんの記事は舞台評ももちろんですが美味しいものも楽しみです。
雪の日の牡蠣南蛮&お銚子1本、いいですねぇ。本当に暖まりそうです。
二月大歌舞伎の初日夜観てきました。やはり娘道成寺は美しかったです!
by Ren (2006-02-05 09:30) 

ShyBoar

Renさん、こんにちは。コメント&nice!ありがとうございます。
美味しいものとお酒には目がないので、そちらの方もできるだけご紹介していきますね。
私も4日5日と二月大歌舞伎に行ってきましたので、TBさせていただきました。
by ShyBoar (2006-02-06 23:47) 

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