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壽初春大歌舞伎(大阪松竹座・昼の部) [観劇(伝統芸能)]

壽初春大歌舞伎(昼の部)
大阪松竹座

2006年1月15日(日) 3階2列17番


1.源平布引滝「義賢最期」一幕

今月は仁左衛門・玉三郎責任興行ということで二人の共演が売り物だが、実は楽しみにしていたのがこれ。番付でのインタビューでも仁左衛門が「身内のことだが、愛之助には私の立役のものを受け継いで欲しい」とはっきりと話しており、十五代目襲名披露での熱演が記憶に新しい演目だけに、どのような義賢を見せてくれるかと思いながら幕開けを待つ。
結果として、期待を遙かに上回る素晴らしい舞台。まず、前半は源氏再興の本心を隠して抑えた芝居になるが、御台の葵御前や娘・待宵姫、更に兄・義朝の髑髏に対しても、愛之助らしい柔らかさを含んだ情感を滲ませていたのが上出来。後半、と言っても50分近い立ち回りが続く訳だが、戸板に乗って立ったまま倒れる見せ場は勿論のこと、二重の階段に前から倒れる「仏倒し」の幕切れまで、息もつかせず勇猛かつ悲壮感漂う芝居をたっぷり見せてくれる。今回の経験は本人にとっても大きな財産になるのではないか。
孝太郎の小万は義太夫狂言らしい古風な雰囲気を持った働きぶりが好ましい。葵御前の笑三郎はまずまずだが、待宵姫の春猿は情感が薄く淡々とした芝居。折平実は多田蔵人行綱の段治郎も、やはり相変わらずすっきりはしているがサラッとした芝居で愛之助との絡みも物足りないのは残念。

2.河竹黙阿弥作 花街模様薊色縫
  通し狂言「十六夜清心」三幕五場

「稲瀬川の場」は菊五郎などでも何度も観ているが、実は「白蓮本宅」までの通しは初見。
まず幕開けの「稲瀬川の場」は、情緒ある清元に乗ってポスターなどの写真のとおり絵になる二人を楽しむ。ただ、「白魚船」「百本杭」の場で心中が果たせなかった二人がそれぞれに生き延び、さらに寺小姓の求女(十六夜の弟)を殺した末に清心が悪の道で生きる気持ちになる「しかし、待てよ・・・」のセリフあたりから、観客の雰囲気が東京と微妙に違うのに気づく。
次の「白蓮妾宅」は、十六夜から本名に戻ったおさよが、死んだと思っている清心への貞節から剃髪する場面だが、尼姿の玉三郎が十分に妖しい美しさを見せる。
最後の「白蓮本宅」は、鬼薊の清吉となった清心と再会したおさよが髪も伸びきらない頭で白蓮宅にやってくる。「浜松屋」を思わせる生世話の強請場で、玉三郎のおさよが言葉遣いも荒く声のトーンも低くなっており、前の場までとの落差を見せる芝居が楽しい。ここでの仁左衛門は、これも本人がインタビューで行っているように、きちんと付き合っているという様子。弥十郎の白蓮はきっちりしてはいるが、実は大悪党という底の深さがもう少し出せれば良いのだが。
この後更に白蓮実は大盗賊・大寺正兵衛と清吉とが兄弟だったというどんでん返しになるが、ここに至って観客の雰囲気が一層東京と違う気がしてしまう。確かに、ある意味馬鹿馬鹿しいようなご都合主義的展開で、こうした場面では東京でも笑いが起こることはあるものの、あくまでもわかった上で話の展開に付き合うのを良しとしている空気だと思う。それに対してこの日の松竹座ではそうした部分になると「んな、アホな・・・」という感じでドッと笑いが起こっていた。どちらがこの芝居本来の姿なのかはわからないが、東西の観客の受け止め方に差があるのは確かだ。

終演後は、昨日とは別の芝居仲間と劇場前で顔だけ合わせただけで、そそくさと新大阪に向かい東京への帰路についた。


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コメント 6

源九郎

いいな~、義賢最期。
レポ読ませていただいて、ますます観たくなりました。
でも、2か月続きで遠征は無理。東京でもやってほしいです。
by 源九郎 (2006-01-17 01:59) 

ShyBoar

源九郎さん、さっそくのコメントありがとうございます。
良かったですよ〜と、更に羨ましがらせてしまうのも何ですが・・・。
歌舞伎座の本興行では難しいかもしれませんが、今回の「仁左衛門・玉三郎責任興行」を演舞場あたりでやってくれれば、東京で観ることができるかもしれないですね。
by ShyBoar (2006-01-18 00:18) 

いわい

コメントとトラックバックありがとうございました。
「義賢最期」は、本当に良かったですね。
松竹座があまり大きくないのが、余計に臨場感をかんじさせてくれたのではと思っております。
こちらからもトラックバックさせていただきますね。
by いわい (2006-01-24 00:20) 

ShyBoar

いわいさん、コメント&TBありがとうございます。
歌舞伎座はその大きさも含めて独特の魅力がありますが、
松竹座はビルの3階という点を除けば、
サイズも適当で設計も良く考えられた劇場だと思います。
by ShyBoar (2006-01-24 23:46) 

愛染かつら

こちらもTBさせて頂きました。
義賢最後の愛之助さんは本当に良かったですね。
正直言ってあそこまで出来るとは思っていなかったので、大感激でした!
by 愛染かつら (2006-01-28 15:17) 

ShyBoar

コメント&TBありがとうございます。
後半の立ち回りは、観ている方がむしろ身構えて緊張しましたが、
演じている愛之助の方には、余裕とまでは言えないものの、
骨太な充実感があるように思えました。
by ShyBoar (2006-01-28 16:28) 

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