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壽初春大歌舞伎(大阪松竹座・夜の部) [観劇(伝統芸能)]

壽初春大歌舞伎(夜の部)
大阪松竹座

3階2列14番

 

昨年7月以来、半年ぶりの大阪松竹座。仁左衛門&玉三郎を看板にした興行で、席も殆ど残っていない様子。

1.福内鬼外 作「神霊矢口渡」一幕

福内鬼外こと才人・平賀源内が書いた江戸義太夫狂言。平成7年に名古屋御園座で観た澤村藤十郎の風情がおぼろげに思い出される。前回観たのは平成10年にこの松竹座で、福助のお舟、段四郎の頓兵衛だった。
今回は孝太郎初役のお舟だが、前半で新田義峯に一目惚れする仕草やクドキには可愛らしさと健気さを感じさせてくれるが、後半手負いになってからの芝居は少し繋がりが悪いというか、幕切れまでもっと切れ目無しに勢いが欲しい気もした。
一方、こちらも初役である弥十郎の頓兵衛だが、悪役としての柄の大きさは出ている。ただ、金のために手負いの娘をさらに引きずり回すような悪人にしては、どこか人柄の良さみたいなものが見える気がするのが少々物足りない。段治郎の義峯、春猿の傾城うてなも、姿は綺麗だが芝居がサラサラとし過ぎ。

2.通し狂言「假名手本忠臣蔵」三幕四場
 浄瑠璃 「道行旅路の花聟 落人」清元連中
 五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
 六段目 与市兵衛内勘平腹切の場

仁左衛門・玉三郎の勘平・おかるによる勘平編の通し。まず「落人」は、戸塚辺りという設定で富士山を背にした穏やかな雰囲気の舞台の上で清元の哀調に乗った舞踊劇が進む。まさに美男美女の道行きを情緒たっぷりに見せてくれる。鷺坂伴内は猿弥で、まずまず。
続く五・六段目は先日二度も浅草で観たばかり。今回の松竹座も、上方風でなく江戸の型での上演とのこと。ただ、浅草は六代目菊五郎から伝わった中村屋の型だろうと思うが、それともまた違いがあって面白い。例えば一文字屋お才が京言葉だったり、二つ玉の鉄砲を花道七三で撃たない、など。これらも松嶋屋独自の工夫なのだろう。全体には江戸風の型ながら義太夫狂言らしい雰囲気を残しているように思う。
芝居の中身は、浅草と比べるまでもなく安心して観られる。仁左衛門の勘平は舅の死の原因に気づくのを境とした気持ちの流れに無理がない。また、主君の大事に居合わせなかったことと、舅を撃ってしまった(と思いこんでいる)ことと、二重の悔恨がしっかり見える芝居。対する玉三郎のおかるも、夫の運命に翻弄される女房の覚悟と悲しさを表して十分。
その他では、愛之助の斧定九郎は仁からは遠いのに、手強さをしっかり出していたのは良かった。また、竹三郎の母おかやが厚みと存在感のある芝居を見せる。段治郎の弥五郎は、格好も声も良いのだが逆にスッキリし過ぎて少々浮いている。弥十郎の不破数右衛門はきっちり。

3.「春調娘七種(はるのしらべむすめななくさ)」長唄囃子連中

正月芝居を「勘平腹切」で打ち出すわけにもいかないということもあって、白梅を背景にした舞台で曽我五郎・十郎に静御前が絡むという設定の長唄舞踊。猿弥、段治郎、春猿という澤潟屋の三人が受け持つ。猿弥の五郎はやや太めながらもそれなりだが、段治郎、春猿ともに膨らみが足りないので、目出度さも中くらいという感じ。

終演後は、芝居仲間と難波の「紅炉庵」という店へ。かなり濃い話やあぶないネタも飛び交って盛り上がる。


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コメント 8

★とろりん★

初めまして。TBさせていただきました。
私も松竹座の後、浅草を見物しましたが、
どちらも違った高揚感で、大変見応えが
ありましたねー。コメントもとても分かりやすく、
勉強になります。これからも覗かせていただきますね。
by ★とろりん★ (2006-01-16 12:28) 

Norihime

やっぱり東京と大阪では観客の反応が違うようですね。
私は明日、夜の部を見に行ってきます。
なのに風邪悪化中です‥‥。
明日に備えて、今日は会社を休みました。
本当に熱があったんですけどね(-_-;)
by Norihime (2006-01-17 19:44) 

ShyBoar

とろりんさん、続けてのTB&コメントありがとうございます。
これだけ立て続けに同じ演目を観ると、色々なことを感じたり気づいたりしますよね。
お気に召しましたら、またちょくちょくお越し下さい。
こちらもまたTBさせていただきました。
by ShyBoar (2006-01-17 23:49) 

ShyBoar

Norihimeさん、こんにちは。具合はいかがですか?
「五・六段目」は悲劇でもありまた見所も多く密度の濃い演目なので、
くれぐれも風邪が早く回復して楽しんでこられるようお祈りしています。
by ShyBoar (2006-01-18 00:11) 

Norihime

行ってきましたよ~、タカオちゃん♪
咳を出さないようにするのに必死でしたけど、オペラグラスでじっくり見ました。
玉三郎&タカオちゃんは美しいですね。
おかやさんもよかったです。
私としては大満足でした。
アホな記事ですが、TBさせていただきます‥‥m(_ _)m
by Norihime (2006-01-19 23:55) 

ShyBoar

Norihimeさん、こんにちは。コメント&TBありがとうございます。記事の中でもご紹介いただき恐縮です。体調のすぐれない中でも、しっかり楽しんでこられたようですね。
by ShyBoar (2006-01-21 00:08) 

いわい

こちらにもお邪魔します。
「おかる勘平」はそれほど覚えていない演目でしたが、さすがに浅草と立て続けだったので違いはわかりました。
なるほど、ShyBoarさんの記事は参考になります。
こちらにもトラックバックをいたします。
by いわい (2006-01-24 00:25) 

ShyBoar

いわいさん、続いてのコメント&TB恐れ入ります。
記事に書いた以外にも、勘平の大小を出すタイミングなども違っていました。
紋服の扱いや定九郎の演技も今回は浅草とほぼ同じでしたが、
本来は東西で相当に異なるようです。
私もまだまだ知らないことばかりですが、
こういったディテールを知れば知るほど歌舞伎の楽しみが深まりますよね。
by ShyBoar (2006-01-24 23:55) 

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